ペットと法①-ペットの法律上の地位

弁護士野田俊之

平成29年12月22日付の一般社団法人ペットフード協会の調査結果によりますと,日本全国で,892万頭の犬,952万6千頭の猫が飼育されていると推計されており,犬や猫などのペットを飼われているご家庭も多いのではないかと思います。

今月からは,こうしたペットにまつわる法律について,紹介させていただきたいと思います。

 

まず,今回は,ペットの法律上の地位について,解説させていただきます。

 

1 ペットの法律上の地位―原則論

 

ペットを飼われているご家庭では,ペットを家族の一員のように,扱っておられる方も多いのではないかと思います。

 

ただ,現在の日本の法律においては,ペットなどの動物については,基本的に,「物」として扱われています。

例えば,民法上,ペットについての明文の規定はなく,「この法律において,『物』とは,有体物をいう。」という規定(民法85条)に従って,「物」にあたると解釈されています。

そのため,ペットを始めとする動物については,民法上,権利義務の帰属主体となることはできません。具体的には,飼い主が,自らの死後,ペットに対して,財産を遺したいと考えたとしても,ペット自身に財産を承継させることはできませんし,仮にペットが何らかの事故によって,負傷あるいは死亡したとしても,あくまで物と同様の扱いを受け,人が負傷あるいは死亡した場合のような高額の慰謝料を請求することはできないこととなります(後者の点については,拙稿「ペットが交通事故に遭ったら」もご覧ください。)。

 

また,刑法においても,ペットについての明文の規定はなく,物として扱うものと解釈されております。

そのため,ペットが誰かに負傷させられたリ,死亡させられたりしたとしても,傷害罪や殺人罪は成立せず,あくまで,飼い主の所有物を破壊したとして器物損壊罪が成立するのみです。

 

もっとも,こうした考え方は,ペットに対する価値観の変化に応じて,今後さらに変わっていく可能性のあるところではないかと思われます。

 

2 ペットが特別の扱いを受ける場合

 

他方で,ペットが生命を有する存在であることなどの特殊性から,法律上,ペットが単なる「物」とは異なる取扱いを受ける場合があります。

 

例えば,動物の愛護及び管理に関する法律においては,犬や猫を始めとするペットについて,「牛,馬,豚,めん羊,山羊,犬,猫,いえうさぎ,鶏,いえばと及びあひる」と,これらのほか「人が占有している動物で哺乳類,鳥類又は爬虫類に属するもの」については,「愛護動物」として,「物」とは異なる扱いをすることと規定されており(同法44条4項),これらの「愛護動物」をみだりに殺し,又は傷つけた者に対しては,2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が成立するなど,上述の器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料)よりも重い犯罪が成立することとされています。

 

その他,ペットについては,「地方公共団体は,動物の健康及び安全を保持するとともに,動物が人に迷惑を及ぼすことのないようにするため,条例で定めるところにより,動物の飼養及び保管について動物の所有者又は占有者に対する指導をすること,多数の動物の飼養及び保管に係る届出をさせることその他の必要な措置を講ずることができる。」と定める動物の愛護及び管理に関する法律第9条の規定に従って,各地方公共団体において,それぞれの地方の実情に合わせた条例が定められております。

例えば,京都市においては,平成27年7月1日から,「京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例」が施行されておりますが,同条例においては,飼い主に対してペットの犬の糞を回収する義務を課したり(同8条2項),市民に対して不適切な方法で,飼い主のいない動物にえさを与えることを禁止する規定(同9条)などが定められ,一定の場合には,過料の制裁が科されることとなっております。

 

 

以上の通り,ペットを始めとする動物については,法律上,基本的に,「物」としての扱いを受けるにとどまっておりますが,生命を有する存在であるという特殊性から,単なる「物」とは異なる取扱いを受ける場面も多数存在するところです。

 

 

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