ペットと法③ーペットの死亡

弁護士野田俊之

悲しいことですが,ペットも生き物である以上,いずれ,お別れの時が来てしまいます。

今回は,ペットが亡くなってしまった場合のことに関する法的な問題について紹介させていただきます。

 

1 ペットの死後

 

(1)死亡後のペットの法的地位

 

既にご紹介した通り,日本の法律上,ペットを始めとする動物は,物としての扱いを受けるにとどまっています(拙稿「ペットと法①―ペットの法律上の地位」参照)。

そのため,ペットが死亡した場合であっても,法律上は物のままであり,その法的地位に大きな変化はありません。

 

なお,動物の死体については,廃棄物の処理及び清掃に関する法律において,同法の規制対象となる廃棄物に該当すると規定されているため(同法2条1項),ペットについても,死亡後は,「廃棄物」として,同法の規制対象になるようにも思われます。しかしながら,この点については,一般に,ペットの死体については,宗教的及び社会的慣習等により埋葬及び供養等が行われるものであるため,社会通念上,廃棄物には該当しないと解されておりますので,ペットについては,死亡したからといって,直ちに「廃棄物」として扱われるというような常識に反する解釈は取られておりません。

 

(2)死亡後の手続

 

ペットが死亡した場合,飼い主が,各地方自治体にペットの死亡を届け出る義務を負う場合があります。

 

例えば,犬の飼い主については,狂犬病予防法により,「同法4条1項の登録を受けた犬の所有者は,犬が死亡したときは,30日以内に,厚生労働省令の定めるところにより,その犬の所在地を管轄する市町村長に届け出なければならない」と定められております(同法4条4項)。なお,具体的な手続については,例えば,京都市では,ホームページ上で具体的な手続が紹介されています(京都市HP参照)

 

また,変わったところで言えば,動物愛護法26条1項に定められているワニやカミツキガメなどの「特定動物」については,飼育に都道府県知事の許可が必要とされているところ,この「特定動物」が死亡したときには,「特定動物飼育・保管廃止届出」を都道府県知事に提出しなければなりません(環境省HP参照)。

 

2 ペットの葬儀

 

人間が亡くなった場合,遺族により故人の葬儀が行われることとなりますが,ペットについても,何らかの形で,ペットの供養を行うことが多いのではないかと思います。

このペットの供養の方法については,飼い主によって様々な考え方があるところかと思いますが,現在の日本で考えられる方法としては,①地方自治体に引き取りを依頼する,②ペット葬儀業者等に委託する,③自身が所有している土地又は墓地に埋葬するといった方法が挙げられるのではないかと思います。

 

①地方自治体による引き取り

犬や猫などのペットについては,手数料を支払うことにより,各地方自治体において,遺体の引き取りを行ってくれるのが一般です(例えば,京都市による引き取りの方法については,上記の京都市HPをご参照ください)。

もっとも,具体的な処分の方法(動物専用の焼却炉で火葬してくれるのか,あるいは,他のゴミと同じように焼却されてしまうのかなど)については,地方自治体によって様々ですので,詳細については,お住まいの地方自治体にお問い合わせいただくのが良いと思います。

 

②ペット葬儀業者等への委託

最近では,ペットについても,人間についての葬儀と同じように,火葬を行った上で,墓地に埋葬を行うといったサービスを提供する業者が増えてきておりますので,こうした業者に対して,ペットの供養を依頼するというのが一つの選択肢になると思います。

もっとも,こうしたペット葬儀業やペット霊園といった事業については,これらの事業を直接規制する法律が存在せず,何らの許可も要せずに事業として行うことができてしまうのが現状であり,中には悪質な業者も存在するところですので,信頼できる業者を探されることをおすすめいたします。

 

③飼い主自身による供養

飼い主が土地を所有している場合には,ペットの遺体を自らの土地に埋葬するという方法も一つの選択肢として考えられます。人間の場合であれば,墓地,埋葬等に関する法律により,墓地以外の場所において,埋葬を行うことは禁止されておりますが(同法4条),ペットについては,同法の規制対象になっておりませんので,ペットの遺体又は遺骨を,自己の所有地に埋葬するということもできます。

もっとも,ペットの遺体をそのまま土葬するような場合には,埋葬後の遺体の腐敗等により,近隣の土地や住民に迷惑を与えることのないように配慮する必要があると思われます。

 

また,飼い主が墓地の永代使用権を保有しているような場合,その墓地にペットの遺骨を埋葬してもらうという方法も一つの選択肢として考えられます。

この点については,上述の通り,墓地,埋葬等に関する法律においては,ペットの遺骨については規制しておりませんので,少なくとも,同法により,ペットの遺骨を埋葬することは禁じられていないということができます。しかしながら,墓苑の管理者がペットの遺骨の埋葬を拒否することは,墓地,埋葬等に関する法律13条に定める「正当な理由」に該当すると解されておりますので,ペットの遺骨を埋葬してもらえるかどうかは,墓地の管理者の判断に委ねられることとなります。

そのため,飼い主が,ペットの遺骨を自らの保有している墓地に埋葬することを希望する場合には,墓地の管理規約を確認したり,墓地の管理者と相談すると良いでしょう(一般的には,寺院境内墓地においては,宗教的な教義・戒律の下で運営されているため,管理者の許可を得ることは難しいと思われますし,公営墓地においても,使用規則等において,「人間の焼骨以外の埋蔵は認めない」旨の条項が置かれていることが多いため,ペットの遺骨の埋葬を認めてもらえるのは,宗旨宗派を問わない民営墓地に限られることになると思われます。)。

 

3 ペットの相続

 

上述の通り,現在の日本の法律上,ペットは物としての扱いを受けており,権利義務の主体となることはできませんので,人間のように,預貯金の口座名義人になったり,不動産の所有者になったりすることはできません。

そのため,ペットについては,人間についてしばしば争いとなるような相続が問題となることはありません。

 

なお,ペットの飼い主がペットよりも先に死亡した場合,上述の通り,ペットが権利義務の主体となることができないことから,たとえ飼い主がペットの身の回りの世話のためにペットに財産を残すことを希望していたとしても,ペットに遺産を相続させることはできないというのが,今の日本の法律です。しかしながら,ペットに対する相続に代わる方法として,飼い主が,生前,信頼できる人物との間で贈与契約や信託契約を締結することにより,事実上,ペットに飼い主の財産を相続させることができるのではないかと思われます。この点については,次回,ご紹介させていただきます。

 

 

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