中国法務の小窓(第10回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「指導性事例:会社法関連」

弁護士 武田雄司

中国法務の小窓(第10回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「指導性事例:会社法関連」

 

 弁護士 武田雄司

 

第1 はじめに

 

本稿から数回にわたり、類似事案の判断に関し下級審を拘束する効果すら与えられている、最高人民法院が指定した指導性事例を紹介していきたいと思います。

 

思いの他、マニアックな論点や当たり前の内容を判断した裁判例も多く、指導性事例として指定される基準がわかりづらいというのが率直な感想ではありますが、まずは会社法関係の事例についてご紹介致します。

 

第2 会社法関係の指導性事例

 

1.指導事例8号(発布日時:2012/4/10

 

関連条文:会社法182条(発布時は183条)

 

第182条  会社の経営管理に重大な困難が生じ、継続して存続すれば株主の利益をして重大な損失を受けさせることとなり、その他のルートを通じて解決することができない場合には、会社の全部の株主の議決権の100分の10以上を保有する株主は、人民法院に対し会社を解散するよう請求することができる。

 

判断要旨:

 

会社法182条の「会社の経営管理に重大な困難が生じ」という事実は、株主が会社の解散の訴えを提起する条件の一つである。「会社の経営管理に重大な困難が生じ」という事実の有無の判断を行うためには、会社組織機構の運行状態を総合的に分析してなされなければならない。会社に利益が上がっている状態であるとしても、株主会のメカニズムが長期に機能不全を起こし、内部管理に重大な障害をかかえ、既にデッドロック状態に陥っている状態であれば、「会社の経営管理に重大な困難が生じ」という事実を認定することができる。

 

会社法及び関連する司法解釈の規定のその他の条件を充たす場合には、人民法院は判決により会社を解散させることができる。

 

2.指導事例9号(発布日時:2012/4/10

 

関連条文:会社法20条、183条(発布時は184条)

 

第20条  会社株主は、法律、行政法規及び会社定款を遵守し、法により株主としての権利を行使しなければならず、株主としての権利を濫用して会社又は他の株主の利益を損なってはならず、かつ、会社法人としての独立した地位及び株主有限責任を濫用して会社債権者の利益を損なってはならない。

 

会社株主は、株主としての権利を濫用して会社又は他の株主に損害をもたらした場合には、法により賠償責任を負わなければならない。

 

会社株主は、会社法人としての独立した地位及び株主有限責任を濫用して債務を回避し、会社債権者の利益を重大に損なった場合には、会社の債務について連帯責任を負わなければならない。

 

第183条  会社は、第180条第(1)号、第(2)号、第(4)号又は第(5)号の規定により解散する場合には、解散事由が出現した日から15日内に清算グループを成立させ、清算を開始しなければならない。有限責任会社の清算グループは株主により構成され、株式有限会社の清算グループは董事又は株主総会が確定する人員により構成される。期限を徒過しても清算グループを成立させて清算をさせない場合には、債権者は、人民法院に対し関係人員を指定して清算グループを構成させ清算をさせるよう申し立てることができる。人民法院は、当該申立てを受理し、かつ、遅滞なく清算グループを組織して清算をさせなければならない。”

 

判断要旨:

 

有限責任会社の株主並びに株式有限会社の董事及び株式支配株主は、営業許可証抹消後、清算義務を履行しなければならない。実際の支配株主でないこと又は実際に会社経営管理に参加していなかったことを理由として、清算義務を免除することはできない。

 

3.指導性事例10号(発布日時:2012/9/18      

 

関連条文:会社法222

 

株主会若しくは株主総会又は董事会の会議招集手続若しくは議決方式が法律、行政法規若しくは会社定款に違反し、又は決議内容が会社定款に違反する場合には、株主は、決議がなされた日から60日内に、人民法院に対し取消しを請求することができる。”

 

判断要旨:

 

人民法院が会社決議の取消紛争事件を審理する際は、以下の事項を審査しなければならない。

 

①会議招集手続及び議決方式が法律、行政法規又は会社定款に違反しているか否か

②決議内容が会社定款に違反しているか否か

 

しかしながら、①及び②に関して違反がないことを前提とする場合、総経理の解任決議において依拠された事実が真実であるか否か及び理由が立つか否かは、司法審査の範囲外である。

 

以上

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