中国法務の小窓(第11回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「指導性事例:反不正当競争法関連」

弁護士 武田雄司

中国法務の小窓(第11回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「指導性事例:反不正当競争法関連」

 

弁護士 武田雄司

 

第1 はじめに

 

前回に引き続き、類似事案の判断に関し下級審を拘束する効果すら与えられている、最高人民法院が指定した指導性事例を紹介していきたいと思います。

 

本稿では、思いの他多く取り上げられていた反不正当競争法関係(日本法でいう不正競争防止法と類似の法令)の事例についてご紹介致します。

 

第2 反不正当競争法関係の指導性事例

 

1.指導事例29号(発布日時:2014/6/23

 

関連条文:民法通則120条、反不正当競争法5

 

「民法通則」

第120条  公民の氏名権、肖像権、名誉権及び栄誉権が侵害を受けた場合には、侵害の停止、名誉の回復、影響の除去及び礼を尽くした謝罪を要求する権利を有し、かつ、損害の賠償を要求することができる。

法人の名称権、名誉権及び栄誉権が侵害を受けた場合には、前項の規定を適用する。

 

「反不正当競争法」

第5条  経営者は、次に掲げる不正な手段を講じて市場取引に従事し、競争相手を損なってはならない。

(1) 他人の登録商標を冒用すること。

(2) 無断で周知商品に特有の名称、包装若しくは装飾を使用し、又は周知商品と近似する名称、包装若しくは装飾を使用して、他人の周知商品との混同をもたらし、購入者に当該周知商品であると誤認させること。

(3) 無断で他人の企業名称又は氏名を使用して、人に他人の商品であると誤認させること。

(4) 商品上に認証標識又は有名優良標識等の品質標識を偽造し、又は冒用し、生産地を偽り、商品の品質について人の誤解を招く虚偽の表示をすること。

 

判断要旨:

 

1.企業が長期かつ広範に対外的に使用し、一定の市場知名度を備え、かつ、関連する大衆に知られ、実際に商号の効用を備える企業名称の略称は、企業名称とみなすことができ、保護する。

 

2.無断に、商業活動において、他人が実際に商号の効果を備える企業名称の略称を、インターネットのリスティング広告関連のキーワードとして利用し、関連する大衆に混同誤認をさせる場合は、不正当競争行為に属する。

 

2.指導事例30号(発布日時:2014/6/23

 

関連条文:反不正当競争法2

 

第2条  経営者は、市場取引において、自由意思、平等、公平及び信義誠実の原則に従い、公認の商業道徳を遵守しなければならない。

この法律において「不正競争」とは、経営者がこの法律の規定に違反し、他の経営者の適法な権益を損ない、社会経済秩序を撹乱する行為をいう。

この法律において「経営者」とは、商品経営又は営利性サービス(以下にいう「商品」には、サービスを含む。)に従事する法人その他経済組織及び個人をいう。

 

判断要旨:

 

1.法定の経営範囲を超え、行政許可・法律法規に違反する行為であるか否かは、法に基づき、商標侵害を制止し、不正当競争の民事権利の行使に影響を与えない。

 

2.反不正当競争法は、経営者間に直接的な競争関係がなければならないという制限はなく、また、同じ業界で事業に従事しているということも要求していない。経営者間において間接的にでも競争関係があり、行為者が反不正当競争法の規定に違反し、他の経営者の合法権益を損害した場合には、不正当競争行為であると認定しなければならない。

 

3.指導性事例45号(発布日時:2015/4/15

 

関連条文:反不正当競争法2

 

第2条  経営者は、市場取引において、自由意思、平等、公平及び信義誠実の原則に従い、公認の商業道徳を遵守しなければならない。

この法律において「不正競争」とは、経営者がこの法律の規定に違反し、他の経営者の適法な権益を損ない、社会経済秩序を撹乱する行為をいう。

この法律において「経営者」とは、商品経営又は営利性サービス(以下にいう「商品」には、サービスを含む。)に従事する法人その他経済組織及び個人をいう。

 

判断要旨:

 

インターネットサービスに従事する経営者は、その他の経営者のHPの検索結果ページ上に強制的に広告を表示する行為をする際、信義誠実原則及び公認の商業道徳に反し、その他の経営者の正当な経営を妨害し、その合法権益を損害した場合は、「中華人民共和国反不正当競争法」2条の原則的な規定に基づき、不正当競争と認定する。

 

4.指導性事例47号(発布日時:2015/4/15

 

関連条文:反不正当競争法52

 

第5条  経営者は、次に掲げる不正な手段を講じて市場取引に従事し、競争相手を損なってはならない。

(1) 他人の登録商標を冒用すること。

(2) 無断で周知商品に特有の名称、包装若しくは装飾を使用し、又は周知商品と近似する名称、包装若しくは装飾を使用して、他人の周知商品との混同をもたらし、購入者に当該周知商品であると誤認させること。

 

判断要旨:

 

1.反不正当競争法のいう「周知商品」とは、中国大陸内において、一定の市場知名度を備え、関係する大衆に知られている商品をいう。国際的に既に知名度のある商品について、中国において、その特有な名称、包装及び装飾に対して保護するためには、別途、中国大陸内において大衆に知られている必要がある。そのため、「周知商品」と認定するためには、当該商品の中国大陸内における販売時間、販売区域、売上額及び販売対象を結びつけ、宣伝の持続時間、程度及び地域範囲を「周知商品」として保護を受ける情況等の要素とし、かつ、当該商品の外国における知名度の情況を適当に考慮し、総合的に判断する。

 

2.反不正当競争法が保護する「周知商品」の特有の包装、装飾とは、区別することができる商品に由来する装い又は保護商品の容器当の包装及び商品又はその包装上記載された文字、図柄、色彩及びその配列・組み合わせによって構成される装飾をいう。

 

3.他人が区別可能な商品由来の「周知商品」特有の包装、装飾について、市場に混乱・誤認させる全面的な模倣は不正当競争行為に該当する。

 

5.指導性事例58号(発布日時:2015/11/19

 

関連条文:商標法577項、反不正当競争法2条、9

 

「商標法」

第57条  次に掲げる行為の1つをした場合には、いずれも登録商標専用権の侵害に属する。

1号~6号(略)

(7)他人の登録商標専用権にその他の損害をもたらす行為

 

「反不正当競争法」

第2条  経営者は、市場取引において、自由意思、平等、公平及び信義誠実の原則に従い、公認の商業道徳を遵守しなければならない。

この法律において「不正競争」とは、経営者がこの法律の規定に違反し、他の経営者の適法な権益を損ない、社会経済秩序を撹乱する行為をいう。

この法律において「経営者」とは、商品経営又は営利性サービス(以下にいう「商品」には、サービスを含む。)に従事する法人その他経済組織及び個人をいう。

 

第9条  経営者は、広告その他の方法を利用して、商品の品質、製造成分、性能、用途、生産者、有効期限及び生産地等について人の誤解を招く虚偽の宣伝をしてはならない。

広告の経営者は、明らかに知り、又は知るべきである状況のもとで、虚偽の広告を代理し、デザインし、作成し、又は発表してはならない。

 

判断要旨:

 

1.「老字号」(という商標)と歴史的淵源がない個人又は企業が「老字号」又はそれと類似する文字を商標として登録した後、「老字号」の歴史を宣伝する場合、「虚偽の宣伝」と認定しなければならず、不正当競争に該当する。

 

2.「老字号」と歴史的淵源を有する個人又は企業は、信義誠実原則に違反しないという前提の下、「老字号」を個人事業の屋号又は企業名称として登録したとしても、人の誤認を招かず、かつ、当該文字・記号が目立って使用されていない場合には、不正当競争に該当せず、登録商標専用使用権を侵害しない。

 

以上

 

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