中国法務の小窓(第13回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「指導性事例:契約法関連②」

弁護士 武田雄司

中国法務の小窓(第13回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「指導性事例:契約法関連②」

 

弁護士 武田雄司

 

第1 はじめに

 

前回に引き続き、類似事案の判断に関し下級審を拘束する効果すら与えられている、最高人民法院が指定した指導性事例を紹介していきたいと思います。

 

本稿は、少し多かった契約法関係の事例の後半分です。

 

第2 契約法関係の指導性事例

 

4.指導事例67号(発布日時:2016/9/19

 

関連条文:契約法94条、167

 

「契約法」

第94条  次に掲げる事由の1つがある場合には、当事者は、契約を解除することができる。
(1) 不可抗力により契約の目的が実現不能となったとき。
(2) 履行期間が満了する前に、主たる債務を履行しない旨を当事者の一方が明確に表示し、又は自己の行為により表明したとき。
(3) 当事者の一方が主たる債務の履行を遅延し、催告を経た後の合理的な期間内になお履行しなかったとき。
(4) 当事者の一方が債務履行を遅延し、又はその他の違約行為をして契約の目的を実現不能にしたとき。
(5) 法律所定のその他の事由

第167条  代金を分割して支払う買主による期限到来代金の未払金額が全部の代金の5分の1に到達した場合には、売主は、全部の代金を支払うよう買主に要求し、又は契約を解除することができる。
売主は、契約を解除する場合には、当該目的対象物の使用料を支払うよう買主に要求することができる。

 

判断要旨:

 

有限責任会社の出資持分の譲渡代金の分割支払をする中で発生した、出資持分の譲受人の支払い遅延又は支払う拒絶等の違約状況が生じ、出資持分譲渡をした者が、出資持分譲渡契約の解除を要求する場合、中華人民共和国契約法第167条の規定は適用しない。

 

5.指導事例72号(発布日時:2016/12/28

 

関連条文:物権法186条、契約法52

 

「物権法」

第186条  抵当権者は、債務の履行期間が満了する前において、債務者が期限到来債務を履行しないときは抵当財産が債権者の所有に帰属する旨を抵当権設定者と約定してはならない。

 

「契約法」

第52条  次に掲げる事由の1つがある場合には、契約は、無効とする。
(1) 一方が詐欺又は強迫の手段により契約を締結し、国の利益を損なうとき。
(2) 悪意により通謀し、国、集団又は第三者の利益を損なうとき。
(3) 適法な形式により不法な目的を隠蔽するとき。
(4) 社会公共利益を損なうとき。
(5) 法律又は行政法規の強制的規定に違反するとき。

 

「民間貸借事件を審理する際の法律適用に係る若干の問題に関する最高人民法院の規定」

第24条  当事者が締結した売買契約を民間貸借契約の担保とし、借入につき期限が到来した後に借主が返済することができない場合において、貸主が売買契約の履行を請求するときは、人民法院は、民間貸借に係る法律関係に従い審理し、かつ、当事者に対し訴訟上の請求の変更を釈明しなければならない。当事者が変更することを拒絶する場合には、人民法院は、訴えの提起を却下する旨を裁定する。
民間貸借に係る法律関係に従い審理し下した判決が効力を生じた後、借主が効力を生じた判決により確定された金銭債務を履行しない場合には、貸主は、売買契約の目的物を競売し、もって債務を償還する旨を申し立てることができる。競売により得た代金と償還するべき借入金の元金・利息との間の差額について、借主又は貸主は、返還し、又は補償するよう主張する権利を有する。

 

判断要旨:

 

消費貸借契約の当事者が合意により、消費貸借契約関係を終了し、不動産売買契約を成立させ、借入金及び利息を不動産売買代金に転化させた場合には、中華人民共和国物権法第186条の規定により禁止される場合には該当せず、また、当該不動産売買契約締結の目的は、「民間貸借事件を審理する際の法律適用に係る若干の問題に関する最高人民法院の規定」第24条に規定されている「民間貸借契約の担保とする」ものでもない。

中華人民共和国契約法第52条の規定する状況がなければ、当該不動産売買契約は法的効力を有する。但し、不動産売買代金に転化させた借入金及び利息の金額は、人民法院は、消費貸借契約等の証拠に基づき審査しなければならず、法律放棄の保護限度額を超えた高額な利息を不動産売買代金に転化させることを防止する。

 

6.指導事例73号(発布日時:2016/12/28

 

関連条文:契約法286条、企業破産法18

 

「契約法」

第286条  発注者が約定どおりに代金を支払わない場合には、請負人は、合理的な期間内に代金を支払うよう発注者に催告することができる。発注者が期限を徒過して支払わない場合には、建設工事の性質に従い価額評価し、及び競売することが適切でないときを除き、請負人は、発注者と合意して当該工事を価額評価することができ、また当該工事を法により競売するよう人民法院に申し立てることもできる。建設工事の代金は、当該工事の価額評価又は競売の代金について優先的に弁済を受ける。

 

「企業破産法」

第18条  人民法院が破産申立てを受理した後には、管理人は、破産申立ての受理前に成立したけれども債務者及び相手方当事者がいずれも履行を完了していない契約について、解除し、又は履行を継続する旨を決定する権利を有するものとし、かつ、相手方当事者に通知する。管理人が破産申立ての受理日から2か月内に相手方当事者に通知せず、又は相手方当事者の催告を受領した日から30日内に回答しない場合には、契約を解除したものとみなす。
管理人が契約の履行を継続する旨を決定した場合には、相手方当事者は、履行しなければならない。ただし、相手方当事者は、管理人に対し担保を提供するよう要求する権利を有する。管理人が担保を提供しない場合には、契約を解除したものとみなす。

 

判断要旨:

 

中華人民共和国破産法第18条の規定する状況に符合する場合、建設プロジェクト施行契約は解除されたものとみなし、請負人の行使する優先弁債権の期限は、契約解除の日から計算しなければならない。

 

以上

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