中国法務の小窓(第5回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「中国の目指す社会主義国家はどんな国?―中国の国家機構~行政組織④」

弁護士 武田雄司

中国法務の小窓(第5回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「中国の目指す社会主義国家はどんな国?―中国の国家機構~行政組織④」

弁護士 武田雄司

 

2.国家機構の紹介

 

2.1 国家機構概要

 

憲法には、第3章に「国家機構」の章が設けられており、以下の7つの節が設けられています。

 

・全国人民代表大会(第1節:第57条~第78条)

・中華人民共和国主席(第2節:第79条~第84条)

・国務院(第3節:第85条~第92条)

・中央軍事委員会(第4節:第93条~第94条)

・地方各級人民代表大会及び地方各級人民政府(第5節:第95条~第111条)

・民族自治地域の自治機関(第6節:第112条~第122条)

・人民法院及び人民検察院(第7節:第123条~第135条)

 

この国家機関の中でも、全国人民代表大会が各機関の長等の任免権、指導権、監督権を行使し、その他の機関をコントロールすることにより全国人民代表大会とトップとする組織が構成されています。

 

各要職に就任している人物も記載された各組織を図式化した一覧が外務省のHPで公表されており(中国国家機関組織図)、大変参考になりますのでどうぞご参照ください。

 

そして、憲法上の国家機構の上に位置するのが中国共産党であり、中国共産党規約に基づき、国家機構と類似する中国共産党全国大会を頂点とする組織が作り上げられています(言い方としては中国共産党の組織に国家機構が類似しているというべきなのかもしれません。)。こちらについても、各要職に就任している人物も記載された各組織を図式化した一覧が外務省のHPで公表されており(中国共産党組織図)、大変参考になりますのでどうぞご参照ください。

 

ご覧いただければお分かりの通り、当然ながら概ね役職が共通しているところです。

 

2.2 全国人民代表大会

 

職権は、憲法の改正、基本法の制定及び改正、国家主席等の選挙、国務院総理の選定、国民経済・社会発展計画及びその執行状況の報告の審査・承認、国家予算及びその執行状況の審査・承認等多岐に渡ります。

 

しかしながら、全国人民代表大会は、毎期の任期は5年とし、通常、年に1度、2週間程度開かれています(前回開催されたのは、2013年3月の12期全国人民代表大会。その前年の2012年11月には、中国共産党第18回全国代表大会が行われ、指導者の交代〔胡錦涛氏⇒習近平氏へ〕がなされました。次の交代時期は、習近平氏が国家主席の2期10年を終える前年である2022年の中国共産党第20回全国代表大会になります。)。

 

そのため、大半の実務は、その常設機関として設置されている常務委員会が代わりに最高国家権力及び立法権を行使する仕組みがとられており、全人代常務委員会会議は、概ね2ヶ月に1度程度会議が開催されています。

 

その他、常務委員会の指導を受ける各専門委員会(民族委員会、法律委員会、財政経済委員会、教育科学文化衛生委員会、外事委員会、華僑委員会等〔全国代表大会組織法第35条第1項〕)が設置され、議案等の作成・審議等が行われています。

 

常務委員会は、必要に応じて活動委員会を置き、活動を行います。現在の活動委員会としては、法制工作委員会、予算工作委員会、香港特別行政区基本法委員会、マカオ特別行政区基本法委員会が設定されています(全国人民代表大会HP―全国人民代表大会機構紹介ページ)。

 

2.3 国家主席

 

国家元首として国を内外に代表する立場の者ですが、具体的な権限としては、全国人民代表大会常務委員会の決定に基づき法律の公布等、形式的・儀礼的権限に限定されています。

 

なお、国家主席には、共産党党中央総書記が就任することになり、現在は、習近平氏が就任しているポジションです。

 

憲法上、2期を超え連続して就任することは禁止されており(憲法第79条)、10年の1度、共産党の中心メンバーと共に変更されることとなります。

 

2.4 国務院

 

国務院は、中央人民政府であって、最高国家権力機関の執行機関であり、最高の国家行政機関と位置づけられています(憲法第85条)。

 

国務院は、総理・副総理若干名・国務委員若干名・各部部長・各委員会主任・会計検査長・秘書長によって組織され、具体的な内部の組織については、国務院組織法で定められます。

 

総理、副総理及び国務委員については、国家主席と同様に、2期を超え連続して就任することは禁止されており(憲法第87条)、10年の1度、共産党の中心メンバーと共に変更されることとなります。

 

国務院には、「憲法及び法律に基づいて、行政上の措置を定め、行政法規を制定し、並びに決定及び命令を発布すること」が認められており、相当細かい行政法規が各部門から発布されています。適法性を判断するためには、これらの行政法規にも十分に注意する必要があります。

 

2.5 中央軍事委員会

 

中央軍事委員会は、全国の武装力を指導する国家機関として位置づけられています。

 

「武装力」としては、中国人民解放軍、人民武装警察部隊等がこれにあたります。

 

国家主席等と異なり、中央軍事委員会の主席については、2期を超えて就任することを禁止する規定がなく、中央軍事委員会主席に座り続けることで事実上の院政を引くことが可能になります。

 

2.6 地方各級人民代表大会及び地方各級人民政府

 

地方の国家権力機関として地方各級人民代表大会が設置され、その地方各級人民代表大会の執行機関として地方各級人民政府が設置されています。

 

中央の組織と同様に、人民代表大会の下には常設機関として常務委員会が設置され具体たきな活動を行っています。

 

法規制定権も設定されており、省及び直轄市の人民代表大会及びその常務委員会は、憲法、法律及び行政法規に抵触しないことを前提として、地方的法規を制定することができ、行政法規と同様に、適法性を判断するためには、これらの地方性法規にも十分に注意する必要があります。

 

2.6 民族自治地域の自治機関

 

民族自治地域における自治機関は、自治区、自治州及び自治県の人民代表大会及び人民政府とされており、この点他の地域と変わりありませんが、自治区、自治州及び自治県の自治機関は、憲法、民族区域自治法その他の法律の定める権限に基づいて自治権を行使し、その地域の実際の状況に即して国家の法律及び政策の執行を貫徹するとされており(憲法第115条)、地域の実際の状況に即した対応が可能な設計にはなっています。しかしながら、実際に特殊な状況に即した立法等がなされているとは言い難い状況のようです。

 

2.7 人民法院及び人民検察院

 

人民法院は、国家の裁判機関であり、「法律の定めるところにより、独立して裁判権を行使し、行政機関、社会団体及び個人による干渉を受けない」(憲法第126条)とは規定されているものの、最高人民法院は、全国人民代表大会及び全国人民代表大会常務委員会に対して責任を負い、地方各級人民法院は、それを組織した国家権力機関に対して責任を負うため、日本で言うところの司法権の独立が認められていることはありません。

 

また、「最高人民法院は地方各級人民法院及び専門人民法院の裁判活動を監督し、上級人民法院は下級人民法院の裁判活動を監督する。」と規定されており(憲法第127条第2項)、裁判官の独立も制度としては存在しません。

 

人民検察院は、国家の法律監督機関と定められています。「人民法院、人民検察院及び公安機関は、刑事事件を処理するに当たって、責任を分担し、相互に協力し、相互に制約し、法律の的確で効果的な執行を保証すべきである。」と規定さており(憲法第135条)、司法権も行政の一部門と位置づけられている点が大きく日本と異なる点です。

 

以上

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