中国法務の小窓(第6回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「中国の目指す社会主義国家はどんな国?―中国の国家機構~行政組織⑤」

弁護士 武田雄司

中国法務の小窓(第6回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「中国の目指す社会主義国家はどんな国?―中国の国家機構~行政組織⑤」

弁護士 武田雄司

 

3.中国の行政組織

 

中国憲法を見ながら中国共産党と中国の人民・国家機構との関係、国家機構の概要の紹介を通じて、中国の全体像がなんとなくわかってきたところで、随分遠回りになりましたが、中国でビジネスをしていくにあたり、なんとなく抽象的に聞き流すと後で痛い目に遭う可能性が高い「政府(or役人)に確認したらOKと言っていた」というフレーズに出てくる「政府(or役人)」についてより具体的に紹介をしたいと思います。

 

日本でも当然問題にはなるところですが、直面している問題の判断権者は一体誰なのか、という問題を判断するために必要な情報整理です。

 

3.1 中国の行政区分

 

中国の行政区分は憲法第30条に次の通り規定されています。

 

①全国を省、自治区及び直轄市に分ける。

②省及び自治区を自治州、県、自治県及び市に分ける。

③県及び自治県を郷、民族郷及び鎮に分ける。

④直轄市及び比較的大きな市を区及び県に分ける。自治州を県、自治県及び市に分ける。

⑤自治区、自治州及び自治県は、いずれも民族自治地域である。

 

3.2 行政区分ごとに設置される行政組織

 

憲法第85条に規定されているとおり、国務院は、中央人民政府であって、最高国家権力機関の執行機関であり、最高の国家行政機関と位置づけられています。

 

その下部組織として、省、自治区、直轄市、自治州、県、自治県、市、市管轄区、郷、民族郷及び鎮に設置される地方各級人民代表大会の執行機関であり、地方各級国家行政機関と位置づけられる地方各級人民政府が存在します(地方各級人民代表大会及び地方各級人民政府組織法第1条、第54条)。

 

地方各級人民政府は、当該級の人民代表大会及び1級上の国の行政機関に対し、責任を負い、かつ、業務を報告する。県級以上の地方各級人民政府は、当該級の人民代表大会の閉会期間において、当該級の人民代表大会常務委員会に対し責任を負い、かつ、業務を報告するしくみが採られており、国務院が全国人民代表大会に従属する仕組みと同様に、各地方における最高権力機関である各級の人民代表大会に従属する仕組みが採られています(地方各級人民代表大会及び地方各級人民政府組織法第55条第1項)。

 

そして、全国の地方各級人民政府は、国務院の統一的指導下にある国の行政機関であり、すべて国務院に従うこととされ(地方各級人民代表大会及び地方各級人民政府組織法第55条第2項)、かつ、法により行政職権が行使されることを通じて、組織法的には、全国的に一定の基準に基づき行政が執行される仕組みが担保されています。

 

3.3 行政組織の構成

 

3.3.1 国務院

 

国務院は、総理、副総理、国務委員、各部部長、各委員会主任、会計検査長及び秘書長により構成され(国務院組織法第2条第1項)、弁公庁の他に、全国人民代表大会(又は常務委員会)が設置、廃止又は統合を決定する各部及び各委員会が設置されています。加えて、活動上の必要性並びに精鋭化及び簡素化の原則に基づき、各専門業務を主管する直属機構を設置し、総理を補佐して専門事項を処理する事務機構も設置されています(国務院組織法第11条)。

 

この各部及び委員会等の把握がポイントですが、少し大部になることから具体的な内容は回を改めてご紹介するとして、国務院HPで紹介されている組織概略は次のとおりです。

 

■国務院組織機構

・国務院弁公庁

・国務院組成部門

・国務院直属特設機構

・国務院直属機構

・国務院事務処理機構

・国務院直属事業単位

・国務院部門・委員会管理国家局

・国務院議事協調機構

 

3.3.2 地方各級人民政府

 

省、自治区、直轄区、直轄市、自治州及び区を設ける市の人民政府は、それぞれ省長及び副省長、自治区の主席及び副主席、市長及び副市長、州長及び副州長並びに秘書長、庁長、局長及び委員会主任等より構成されています。

 

県、自治県、区を設けない市及び市管轄区の人民政府は、それぞれ県長及び副県長、市長及び副市長、区長及び副区長並びに局長及び科長等より構成されています。

 

また、郷及び民族郷の人民政府には、郷長及び副郷長が設けられ、民族郷の郷長は、民族郷を築いた少数民族の公民が担任することとされています。鎮人民政府には、鎮長及び副鎮長が設けられることとなっています(地方各級人民代表大会及び地方各級人民政府組織法第56条)。

 

加えて、国務院の組織機構の下部組織として、各業務部門が設置され、人民政府の統一的指導を受け、かつ、法律又は行政法規の規定により国務院の主管部門の業務指導又は指導を受ける仕組みが採られています(地方各級人民代表大会及び地方各級人民政府組織法第66条)。

 

次回は、国務院の下部組織として、実際に様々な業務を管轄する各部門等を紹介したいと思います。

 

以上

弁護士 武田雄司

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