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主婦の休業損害に関する裁判例の考え方

主婦の休業損害に関する裁判例の考え方

交通事故に遭われた場合,相手方に請求できる損害の項目の一つとして,「休業損害」があります。休業損害とは,交通事故により受けた傷害の治療のため休業を余儀なくされ,その間収入を得ることができなかったことによる損害をいい,事故当時の収入に休業日数を乗じて計算されます(1日の基礎収入×休業日数)。

 

ここで,会社の従業員等の給与所得者の休業損害は,会社から給与を受け取っているため,基礎収入は明確ですし,会社から休業に関する証明書を発行してもらうなどして,比較的容易に休業損害を証明することが可能です。他方,主婦のような家事労働に従事する者については,給与所得者のような収入がなく,会社からの証明書のように,家事労働ができなくなったことを客観的に証明できるような資料がないため,休業損害の算定には困難が伴います。

 

この点,裁判実務においては,家事労働であっても,財産的な評価は可能であり,受傷により家事に従事することができなかった期間については,休業損害を算定できるとしています(最判昭和50年7月8日交民8巻4号905頁)。そして,基礎収入については,専業主婦の場合は,賃金センサスの女性労働者の全年齢平均賃金または年齢別平均賃金(高齢者の場合には,こちらが用いられることがあります)によって計算し,兼業主婦の場合は,現実の収入額が賃金センサスの女性労働者平均賃金より低いときは平均賃金を,平均賃金より高いときは現実の収入額を基礎収入として計算することになるとされています。

 

ただし,近時の一般的な裁判例によれば,休業損害の算定にあたり,就労が不可能であった割合を,休業日数全体について100%であると評価するのではなく,被害者の症状や治療の経過を考慮し,「一定期間までは100%,それ以降症状固定日までは○○%就労不能であった」といった段階的な認定方法,又は,症状固定日までを全体的に評価し,一定の割合で就労が不能であったといった割合的な認定方法が取られています。たとえば,以下のような裁判例があります。

 

①東京地判平成26・4・15

 

この事案は,Y1が運転する乗用車が,横断歩道を横断歩行中のXに衝突し,Xが受傷したとして,Y1及びY2(Y1の保険会社)に対し,損害賠償を請求した事案です。裁判所は,Xの症状(擦過傷,背部痛,左鎖骨骨折等)及び通院のうち,平成13年10月4日から平成14年2月28日までのものを,事故と相当因果関係の認められるものと認め,休業損害について,同期間の症状及び通院状況を考慮し,本件事故の日である平成13年10月4日から同月31日までの28日は100%の,その後平成14年2月28日までの120日は50%に相当する休業損害を被ったと認めるのが相当であるという段階的な認定手法を採用しました。

 

②大阪地判平成29・1・31

 

この事案は,原告が運転する普通乗用自動車と被告Y1’運送店ことY1に雇用されたY2が運転していた普通貨物自動車との間に発生した交通事故により損害が発生したとして,同人らに対し損害賠償請求を求めた事案です。裁判例は,原告の症状について,「上記事故態様及び車両の損傷状況,治療経過によれば,原告は,本件事故により頸椎捻挫の傷害を負ったものと認められる。」とし,同症状に関する治療のうち,事故と因果関係のあるものを,事故日である平成25年1月7日以降平成25年6月29日までと認定した。そして,休業損害については,「原告は,本件事故当時,同居し就労している内縁の夫のために家事に従事していたと認められるところ,本件事故により同家事労働に一定の支障が生じたということができる。受傷の内容程度及び通院状況に鑑み,本件事故発生日から上記(1)で認定した症状固定日までの183日間,50%労働能力を喪失したものとして,平成25年の女子年齢別平均賃金日額7839円を基礎に算出した上記金額を本件事故と相当因果関係のある休業損害と認める。」とし,割合的な認定方法を採用し,7839円×183日×0.5=71万7268円の休業損害を認めました。

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