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オーストラリアビジネス法務(8)-取締役の選任ー

弁護士 髙橋健

 

(本コラムでは、特段の断りがない限り、日系企業がオーストラリア進出の際によく用いる法人形態であるCompany Limited by shares(有限責任株式会社)で、かつProprietary company(非公開会社)を念頭においてお話します。)

 

1 オーストラリア会社法における取締役の選任手続

 

前回のオーストラリアビジネス法務(7)では、今後、法人設立型の合弁契約を想定しながら、重要と考えられる豪州会社法の規定を、それがReplaceable rulesとして定められているか否かという視点も交えて検討していこうというお話をしていたかと思います。

 

今回は、その第1弾として、オーストラリア会社法における取締役の選任手続についてみていこうと思います。

 

 

日本と同様、オーストラリアにおいても、通常、会社の業務は取締役が中心となって行われるため、合弁会社を設立する場合、株主間契約でその取締役の人数や選任方法等を定めることが多いです。

 

 

そして、オーストラリア会社法では、その201G条において、一般的な取締役選任に関する事項を定めています。

そこでは、会社は、株主総会の普通決議によって取締役を選任することができる、とされています。日本の会社法においても、取締役は株主総会の普通決議によって選任されるとされていますので、この点は同様といえます。

 

 

2 定款で選任方法を変更することは可能か?(Replaceable rulesか?)

 

 

前回のコラムにおいて、オーストラリア会社法では、Replaceable rulesという概念があり、それは、会社の定款の規定によって置き換えることができる会社法上の規定である、とご説明しました。

 

そのため、もし上記1でご説明した会社法201G条の規定がこのReplaceable rulesに該当すれば、会社は、定款によって、この会社法上の定めと異なる取締役の選任手続を定めることが可能となります。

 

 

結論としては、オーストラリア会社法201G条のタイトルが「Company may appoint a director (replaceable rule–see section 135)」となっているため、それはReplaceable rulesの一つにあたります。

 

 

したがって、会社は、オーストラリア会社法201G条と異なる、会社設立後の取締役の選任方法を定款に定めることが可能と考えられています。

 

例えば、定款において、会社は、取締役会にて取締役を選任することができる、と規定することも可能と考えられています。

 

日本の会社法では、株主総会の決議事項とされている取締役の選任手続を取締役会にて行う旨定款で定めることはできない(法的効力を有さない)と考えられていますので、この点は日本とオーストラリアで異なります。

 

 

3 その他の取締役によって取締役を選任する手続き

 

 

最後に、これはやや特殊な場合ですが、既存の取締役が新たに取締役を選任することができる場合がありますので、少しだけご紹介しておきます。

 

オーストラリア会社法では、取締役会の定足数を2名と定めています(オーストラリア会社法248F条。但し、これもReplaceable rulesの一つです)。

 

そのため、取締役会を開催するときには、この定足数を充足している必要がありますが、取締役の方が急死された等により、定足数を欠いてしまうことがあるかと思います。

 

その場合、既存の取締役は、不足している取締役を新たに選任することができる、とされています(オーストラリア会社法201H条(1))。

ここは、前述しました取締役の選任には株主総会の決議が必要とされていることの例外にあたるといえます。

 

もっとも、このオーストラリア会社法201H条(1)に基づき、既存の取締役が他の取締役を選任した場合であっても、その選任した日から2か月以内に株主総会を開催し、そこで当該取締役選任を追認する決議を行う必要があるとされています(オーストラリア会社法201H条(2))。

この決議が2か月以内になされなければ、2か月後に当該取締役の選任の効力は失われるとされています(オーストラリア会社法201H条(2))。

 

 

なお、このオーストラリア会社法201H条も、定款で変更可能なReplaceable rulesの一つとされています(同条のタイトルが「Directors may appoint other directors (replaceable rule–see section 135)」とされています)。

 

 

 

以上、今回は、取締役の選任手続きに関するオーストラリア会社法の規定を、簡単ではありますが検討しました。

 

 

 

弁護士 高橋 健

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