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医療法務の知恵袋(2)【病院の苦悩~医療費未収金は諦める?~part1】

医療法務の知恵袋(2)【病院の苦悩~医療費未収金は諦める?~part1】

医療法務の知恵袋②【病院の苦悩~医療費未収金は諦める?~part1】

 

 

 

Question
当院では、これまで入院した患者さんを中心に、お金がないなどの理由でお支払いただけていない未収の医療費が多く存在しています。このような未収の医療費を回収するためには、どのような方法がありますか。
また、今後、このようなことが起きないようにするために、有効な予防策はありますか。

 

 

 

だいぶ間が空いてしまいましたが、今回も、医療法務の豆知識をお話してみたいと思います。

 

前回は、お医者さんの苦悩として、応召義務の問題(お医者さんは、患者さんから診療を求められた場合、基本的には、その求めに応じて診療してあげなければならない義務)をお話しました。

 

今回は、病院の苦悩として、医療費未収金の問題を取り上げてみたいと思います。

もっとも今回の医療費未収金の問題も、結局のところ、問題を難しくしている根源には応召義務があるのではないかと思われ、その意味では、応召義務の続編といった感じになろうかと思います(ただし、詳細はpart2でお話します・・すいません)。

 

医療費には、入院の際に患者さんが病院に支払う入院医療費や、外来で来た患者さんが病院に支払う外来医療費といった健康保険上の一部負担金があるほか、いわゆる差額ベッド代と呼ばれる健康保険が適用されない医療費などもあります。
今回は、そういった、病院が患者さんから支払いをうけるべき医療費が未収の状態となっていることにつき、その現状と対策を考えてみます。

 

今回のpart1では、その医療費が病院経営の中で実質的な収入の柱となっていることと、しかしその医療費に現在多額の未収金が発生していることを、具体的なデータをもとにお話したいと思います。

 

 

1. 病院の収入の9割以上が医療費で成り立っている!

 

まず、医療機関の経営実態を見てみます。つい数か月前である今年の6月13日に、一般社団法人全国公私病院連盟が一般社団法人日本病院会と協力して、例年6月を対象に実施している共同調査(病院運営実態分析調査)の平成24年6月実施結果が公表されました。

 

それによれば、調査に回答した719病院のうち32.4%(233病院)の病院が総損益差額からみて黒字となっていて、他方、67.6%(486病院)の病院が総損益差額からみて赤字であったとの結果が出ています。しかも、程度に差はあれ、平成15年から平成24年まで、一貫して過半数以上の病院が赤字経営となっています。

 

もちろん、回答された病院の絶対数が少ないことなど、一概にこの数字から日本の医療機関すべてにおいてその過半数以上が赤字経営だと考えるのは早計だと思われますが、それでも、無視できない数字だと思います。

 

そして、こういった苦しい病院経営における収入の中心は、当然、医業収入であり、そのうちでも、入院収入と外来収入が大半を占めていること(前述した平成24年6月の病院運営実態分析調査によれば医業収入を100とした場合、入院収入と外来収入とで96.2を占めています)に照らすと、この入院収入や外来収入(つまりは医療費)をしっかり回収することは、病院経営において大変重要であると思われます。

 


2. ところがその医療費に多額の未収金が発生している現状!

 

ところがその医療費は、平成17年に実施された四病院団体協議会(全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会及び日本病院会)が当該協議会に加入している約3270病院を対象とした調査によれば、1年間の累積未収金額が約219億、3年間で約426億円となることが指摘されました。

 

こういった状況を受けて、厚生労働省も、平成19年から翌20年にかけて、医療機関の未収金問題に関する検討会を開き、同問題を検討しています。

 

同検討会においても、未収金の実態を把握すべく、上記四病院団体協議会に加入する病院のうち812の病院に対しアンケートを実施しました。

 

それによれば、未収金の金額ベースでいえば、外来医療費が16.5%であるのに対し、入院医療費が83.5%となっており、また診療科目別においても、主に入院患者を対象とする外科が47%となっており、主に外来患者を対象とする内科26.2%の約2倍という実態となっています。

 

(そもそも、辛い病気を治してもらった対価である医療費に未収金が発生していること自体、驚くべき事実だと思いますが、継続的に病院にお世話になった結果発生する入院医療費についても、このような大きな未収金が発生しているとは、本当に信じがたいです・・)

 

やはり、入院医療費は、外来医療費と比較し、金額が大きくなりがちであることの影響でしょうが、こういった実態を踏まえると、未収金対策としては、特に入院医療費への対策が重要であると言えそうです。
(もちろん、未収金が累積することで生じる病院への悪い評判(あの病院は治療費を踏み倒せる、といった評判)を生じさせないためにも、件数ベースでみて未収金発生率の高い外来医療費への対策も忘れてはなりませんが)。

 

やや数字の分析に偏ってしまいましたが、次回のpart2では、私の本業の法律の観点から、上記厚労省検討会の意見を集約した平成20年7月10日付報告書を踏まえつつ、こういった未収医療費の回収策と予防策を検討していきたいと思います。

 

 

(弁護士 髙橋 健)

 

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