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医療法務の知恵袋(23)【社員が退社した場合の問題①】

医療法務の知恵袋(23)【社員が退社した場合の問題①】

 

Question

 

私が理事長を務める医療法人は,いわゆる経過措置型医療法人で出資持分の定めのある医療法人です。

 

この度,長年社員であった者が退社することとなったのですが,その者から出資持分の払戻しの請求を受けています。

 

このような払戻しの請求には応じなければならないのでしょうか。

 

 

 

1 社員の退社に関わる問題とは

 

 

前回,医療法人の社員についてお話しました。

 

今回は,その前回の知恵袋の最後に少し言及しました,社員が退社する場合の問題点について,お話します。

 

この社員が退社した場合の問題としてよく目にするのが,退社した方から医療法人に対し行われる,出資持分の払戻し又は基金の返還請求の問題です。

 

この問題は,少々お話すべき事柄が多いため,今回から何度かに分けてお話しようと思います。

 

今回は,前提問題として,出資持分がある医療法人と,そのような出資持分がない医療法人のことをご説明します。この両者で退社した場合の問題の扱いが大きく異なるためです。

 

 

2 出資持分がある医療法人とは

 

 

出資持分がある医療法人とは,社団医療法人であって,その法人の定款に出資持分に関する定め(一般的には,社員の退社に伴う出資持分の払戻請求を認める等の定め)を設けている法人をいいます。

 

実は,このような出資持分がある医療法人は,平成19年施行の第五次医療法改正により,現在,新たに設立することができなくなっています。

 

しかしながら,既に存在している出資持分のある医療法人については,当分の間,存続することを認める経過措置がとられており,それによって現在も多くの出資持分のある医療法人が存在しています(この医療法人のことを,「経過措置型医療法人」 と呼びます)。

 

このような出資持分がある医療法人においては,法人を退社した社員は,医療法人に対し,その出資額に応じて払戻しを請求することができることとなります。

 

ただ,この「出資額に応じた払戻し」の具体的内容(退社時点の法人の財産評価額を基準とするのか等)については,過去に裁判で争われたこともあります。その点については,次回以降にご説明します。

 

 

3 出資持分のない医療法人について

 

 

他方で,医療法人には,社団医療法人であって,その定款に出資持分に関する定めを設けていない法人も存在します。

 

先程言及した平成19年施行の第五次医療法改正によって,新たに社団医療法人を設立する場合は,この出資持分のない医療法人しか認められないこととなりました。

 

この医療法人であれば,先程お話した,出資持分の払戻し請求の問題は,そもそも出資持分がない以上,生じ得ないこととなります。

 

もっとも,この出資持分のない医療法人の中には,法人が活動するにあたり必要となる資金を調達する手段として,基金という制度を採用している法人が存在します(基金拠出型法人と呼ばれます)。

 

このような基金拠出型法人の場合,社員が退社した際に,その基金の返還をめぐって問題が生じることがあります。

 

 

4 まとめ

 

 

このように,医療法人には,大別して,現在においても出資持分のある医療法人と,出資持分のない医療法人が存在します。

 

そして,これらの法人で,社員が退社した場合に発生する問題点は,大きく異なります。

 

次回以降,この問題点について,出資持分がある医療法人,ない医療法人に分けて,裁判例も交えながらご説明します。

 

 

(弁護士 髙橋健)

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