貸付地の管理について(3)|宗教法人の知恵袋

貸付地の管理について(3)

今回は建物所有を目的とする土地の賃貸借契約に適用される特別法及び契約書を作成される際にご留意いただきたい事項について述べたいと思います。

 

1.借地法・借地借家法

(1)借地法と借地借家法

建物所有を目的とする土地の賃貸借契約には、借地法(大正10年4月8日法律第49号)ないしは借地借家法(平成3年10月4日法律第90号)が適用され、特別の制限が課されています。借地借家法は平成4年8月1日に施行され、それまでは借地法が適用されていましたが、借地法は借地借家法の施行に伴い廃止されました。もっとも、平成4年8月1日よりも前に締結された賃貸借契約には、現在でも旧借地法が適用される場合があります。

(2)借地法と借地借家法との重要な差異

借地借家法と借地法との重要な差異としては、借地権の存続期間、更新の排除の可否、賃貸借契約を解約する場合の正当事由の3つがあります。

ア.存続期間

旧借地法が適用される場合、賃貸借契約で借地期間を定めていなければ、借地期間は、堅固建物(例えば、鉄筋コンクリート造りの建物等)所有の場合は60年、その他の建物(例えば、木造の建物)所有の場合は30年とみなされます(借地法2条1項)。他方、借地借家法が適用される場合は、賃貸借契約で借地期間を定めていなければ、借地期間は30年となります(借地借家法3条)。

また、期間満了による更新後の借地期間について、旧借地法は、堅固建物は30年、その他の建物は20年、当事者がそれ以上の期間を定めた場合はその期間としていますが(借地法5条)、借地借家法は、最初の更新後は20年間、2回目以降の更新後は10年間、当事者がそれ以上の期間を定めた場合はその期間としています(借地借家法4条)。

イ.更新の排除の可否

旧借地法下では更新を排除する特約は認められていませんでしたが、借地借家法下では、賃貸借契約において、借地期間を50年以上と定める場合は、賃貸借契約の更新を排除する合意をすることができます(定期借地権)。この合意をする場合は、公正証書などの書面で行う必要があります(借地借家法22条)。このように更新を排除するものとしては、この他にも事業用定期借地(借地借家法23条)、建物譲渡特約付借地(借地借家法24条)等があります。

ウ.賃貸借契約を解約する場合の正当事由

借地借家法6条は、地主が賃貸借契約を解約しようとする場合正当事由が必要であるとし、その正当事由の存否を判断する際の具体的な基準を列挙しています。これに対し、旧借地法はこの正当事由について「土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合」(借地法4条1項但し書)という抽象的にしか規定していませんでした。

もっとも、借地借家法6条の「正当事由」の有無を判断する際の基準は、それまでの判例を成文化したものですので、旧借地法が適用される場合も、借地借家法6条と同様の基準で判断されることになります。

 

2.契約書を作成する際に留意いただきたい主な事項

最後に、建物所有を目的とする賃貸借契約について契約書を作成される際にご留意いただきたい主な事項について述べたいと思います。

(1)借地権の存続期間

上記1(2)アで述べた通り、借地借家法は、借地権の存続期間は30年とし、それよりも長い期間を定めた場合はその期間が存続期間となるとしていますので(借地借家法3条)、借地期間を30年以上としたいのであれば、存続期間を契約書に明記するべきです。

また、借地借家法は、賃貸借契約更新後の借地権の存続期間について、最初の更新後は20年間、2回目以降の更新後は10年間とし、当事者がそれ以上の期間を定めた場合はその期間としていますので(借地借家法4条)、更新後の借地権の存続期間を借地借家法の規定する期間よりも長くしたい場合は、その期間を契約書に明記しておくべきです。

(2)更新料の支払を承諾する旨の定め

借地権の存続期間が満了となる場合は、借地上に建物があり、かつ、借地権者が契約の更新を請求または借地権者が土地の使用を継続する場合は、地主がそれに異議を述べない限り、賃貸借契約は自動的に更新されます(借地借家法5条1項、2項)。この契約更新の際に、更新料の支払いを受けたい場合には、更新料の支払いを承諾する旨の特約を契約書に明記するべきです。また、この特約を設ける場合、更新料の額については、できる限り具体的に記載するべきです(例えば、「賃貸借契約更新時の借地権価格の〇パーセントの割合に相当する額」等)。

なお、更新料支払特約については、「貸付地の管理(2)」の2でも述べた通り、その有効性について疑義はあるものの、最高裁判所は借家契約についてのものですが更新料支払特約の有効性を認めています。

(3)借地条件の変更を制限する定め

賃貸借契約に借地条件(借地人が借地上に所有する建物の種類、構造、規模、用途等)が定められていない場合は、借地人は借地権の存続期間中、自由に建物の種類、構造等を変更できることになります(借地借家法17条参照)。

したがって、借地条件の変更を制限したい場合には、借地条件の変更を制限することを契約書に明記する必要があります。なお、借地条件の変更を制限する定めがある場合、借地人が地主の承諾に代わる許可を裁判所に申し立てる制度があることは、「貸付地の管理(2)」の4で述べた通りです。

(4)無断増改築を禁止する定め

賃貸借契約に無断増改築を禁止する定めを設けていない場合、借地人は借地権の存続期間中、建物の増改築を自由に行うことができることになります。

したがって、借地人による自由な増改築を制限したい場合には、無断増改築を制限することを契約書に明記する必要があります。なお、借増改築を制限する定めがある場合、借地人が地主の承諾に代わる許可を裁判所に申し立てる制度があることは、「貸付地の管理(2)」の5で述べた通りです。

(5)その他

上記以外にも契約書を作成される際に留意いただきたい事項は多々ありますので、契約書を作成される場合にはご注意ください。

3.最後に

貸付地の管理について3回にわたり述べてきましたが、これまで述べた以外にもご注意いただきたい事項が多くあります。何らかの問題が起こってから弁護士にご相談に来られる方が多いのですが、問題が起こらないようにするのが最善ですので、判断に迷われた場合はもちろん、何らかの判断をされる場合には事前に弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士 荻野伸一