宗教法人の知恵袋(弁護士 荻野伸一)|宗教法人の知恵袋

宗教法人の解散(2) (法定解散)

1.はじめに

前回は、宗教法人の解散のうち、任意解散について述べましたので、今回は、宗教法人法が規定する事由(宗教法人法43条2項)に基づいてなされる法定解散について述べたいと思います。

 

2.宗教法人の法定解散事由

(1)法定解散事由

法定解散事由については、宗教法人法43条2項に以下の様に規定されており、これらの解散事由に該当したときは、所轄庁の認証を要することなく、解散手続に進むことになります。

① 規則で定める解散事由の発生(宗教法人法43条2項1号)

② 合併(合併後存続する宗教法人における当該合併を除く。)(同項2号)

③ 破産手続開始の決定(同項3号)

④ 所轄庁による認証の取消し(同項4号)

⑤ 裁判所の解散命令(同項5号)

⑥ 宗教団体を包括する宗教法人にあっては、その包括する宗教団体の欠亡(同項6号)

以下では、各事由について述べていきます。

 

(2)規則で定める解散事由

宗教法人は、その規則で解散事由を定めておくことができます。なお、宗教法人設立時に、規則に解散事由の定めがなくても、規則を変更して解散事由を定めることもできますし、その反対に、規則に解散事由の定めがあっても、その事由の発生前であれば、規則を変更して解散事由をなくしたり、変更することができます。

規則に解散事由の定めがあるときは、解散事由が発生すると、その宗教法人は解散することとなります。

 

(3)合併

二以上の宗教法人は、合併して一の宗教法人となることができます(宗教法人法32条)。

合併によって消滅する宗教法人は、合併によって解散することとなりますが、この場合は存続する宗教法人が解散する宗教法人の権利義務を包括的に承継するため、解散する宗教法人は清算手続を行う必要がありません。なお、宗教法人の合併については別途述べる予定です。

 

(4)破産

裁判所によって破産手続の開始決定がなされると宗教人は解散することとなります。

宗教法人の破産原因としては、債務超過と支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます)とが考えられます。なお、債務超過の場合は、代表役員またはその代務者は、直ちに破産手続開始の申立をしなければならず、その申立によって、裁判所は破産開始決定を行います(宗教法人法48条)。

 

(5)所轄庁による認証の取消し

宗教法人となるためには宗教団体であることが要件とされているところ(宗教法人法13条1項1号、39条1項3号)、この要件が満たされていないことが判明したときは、所轄庁は、当該認証に関する認証書を交付した日から一年以内に限り、当該認証を取り消すことができます(宗教法人法80条1項)。認証が取り消されると宗教法人は解散することとなります。

 

(6)裁判所の解散命令

裁判所は、一定の事由がある場合は、所轄庁、利害関係人または検察官から請求があったとき、請求が無くても職権で、宗教法人に解散を命ずることができます(宗教法人法81条1項)。具体的には次のような事由がある場合、解散命令の対象となります。

① 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと(宗教法人法81条1項1号)。

② 宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成するという宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたってその目的のための行為をしないこと(同項2号)。

③ 単立の宗教法人である場合には、礼拝の施設が滅失し、やむを得ない事由がないのにその滅失後二年以上にわたってその施設を備えないこと(同項3号)。

④ 一年以上にわたって代表役員及びその代務者を欠いていること(同項4号)。

⑤ 宗教法人の設立または合併に関する認証書を交付した日から一年を経過している場合で、当該宗教法人が宗教団体でないことが判明したこと(同項5号)。

 

(7)宗教団体を包括する宗教法人にあっては、その包括する宗教団体の欠亡

包括宗教法人(宗派、教派、司教区等)は、被包括宗教団体(寺院、神社、教会等。宗教法人となっていない宗教団体も含みます)がなくなった場合は、包括宗教法人の要件を欠くこととなりますので解散することになります。

弁護士 荻野 伸一

宗教法人の解散(1) (任意解散)

 

1.はじめに

宗教法人の解散とは、宗教人の目的である宗教活動を終了し、財産関係の整理を行う手続(清算手続)に入ることをいいます。解散した宗教法人は、清算の目的の範囲内において、清算手続が終了するまでは存続するものとされています(宗教法人法48条の2)。清算手続に入った宗教法人は清算業務のみを行い、清算手続が終了した時点で消滅することになります。

 

2.宗教法人の解散事由

宗教法人の解散には、宗教法人が自らの意思で解散する任意解散(宗教法人法43条1項)と宗教法人法が規定する事由(宗教法人法43条2項)に基づいてなされる法定解散とがあります。

 

3.任意解散

(1)はじめに

宗教法人は、任意に解散することができます(宗教法人法43条1項)。任意解散は以下のような手続によります。

 

(2)任意解散の内部手続

まず、規則の定めに基づく手続を経ることが必要となります(宗教法人法44条2項)。規則に別段の定めがない場合は、責任役員(会)の定数の過半数で決することとなります(宗教法人法19条)。

次に、信者その他の利害関係人に対し、解散に意見があればその公告の日から2か月を下らない一定の期間内にこれを申し述べるべき旨を公告します(宗教法人法44条2項)。なお公告は、規則に定める方法(宗教法人法12条1項11号)で行います。また、信者その他の利害関係人が期間内に意見を申し述べたときは、その意見を十分に考慮して、その解散の手続を進めるかどうかについて再検討しる必要があります(宗教法人法44条3項)。

 

(3)清算人の選任

解散後の業務は清算人が行うことになりますので、それまでの代表役員またはその代務者は、規則に別段の定めがない限り、退任することになりますので、清算人を選任することが必要となります。

清算人は、①規則に定めがある場合はその者、②解散の際に、代表役員またはその代務者以外の者を選任したときは、その選任された者、③①または②によらないときは代表役員またはその代務者が清算人となります(宗教法人法49条1項)。

 

(4)任意解散の認証手続

上記(2)の公告期間経過後に、所轄庁に任意解散の認証の申請を行うことになります(宗教法人法44条1項)。解散の認証申請に必要な書類は、①解散認証の申請書、②解散の決定について規則で定める手続(規則に別段の定がないときは、責任役員(会)の定数の過半数の決議)を経たことを証する書類、③公告をしたことを証する書類となります(宗教法人法45条)。

所轄庁は、宗教法人から申請書を受理した後、審査を行い、手続が適法にさされたと認めたときは認証を行い、認証書を交付します。任意解散の効力は、認証書の交付によって生じます(宗教法人法47条)。

 

(5)解散登記・清算人就任登記

清算人は、解散に関する認証書の交付を受けた日から2週間以内に、宗教法人の主たる事務所の所在地において、解散の登記及び清算人就任の登記をしなければなりません(宗教法人法57条、53条)。

 

(6)所轄庁への届け出

清算人は、上記(5)の登記が完了したときは、遅滞なく、登記事項証明書を添えて、その旨を所轄庁に届け出なければなりません(宗教法人法9条)。

    弁護士 荻野 伸一

宗教法人の管理・運営(7) (宗教法人規則の変更―3)

1.はじめに

前々回、前回では、宗教法人の規則の変更が必要となる3つの場合(①通常の場合、②被包括関係の設定を行う場合、③被包括関係の廃止を行う場合)のうち、①通常の規則変更の場合、②被包括関係の設定を行う場合について述べました。今回は、③被包括関係の廃止を行う場合の規則変更について述べたいと思います。

 

2.被包括関係の廃止を行う場合の規則変更

(1)宗教法人内部の手続

被包括関係の廃止も規則の変更事項ですので、通常の規則変更や被包括関係の設定の場合と同様に、宗教法人の規則に定められている規則の変更手続に従って、被包括関係を廃止する旨の決定を行います。

その後、規則の変更の認証申請の2か月前までに、信者その他の利害関係人に対して、規則の変更案の要旨を示して被包括関係を廃止する旨を公告しなければなりません(宗教法人法第26条2項)。

この場合の公告方法は、規則に定める方法によります(宗教法人法第12条1項11号参照)。

 

(2)包括宗教団体に対する通知

また、被包括関係の廃止を行う場合には、上記2(1)の公告と同時に被包括関係を廃止しようとする包括宗教団体に対しその旨を通知する必要があります(宗教法人法第26条3項)。

なお、被包括宗教法人の規則に、被包括関係を廃止するには包括宗教団体の承認を要する旨の規定があったとしても、包括宗教団体の承認は必要ではありません(宗教法人法第26条1項)。このように、包括被包括関係の廃止について、被包括宗教法人が包括宗教法人の意思に拘束されないのは、信教の自由(憲法第20条)を尊重する立場から宗教法人の自主性を重んじたためです。

 

(3)包括宗教団体の調査

包括宗教団体は、上記2(2)の通知を受けると、被包括宗教団体において包括被包括関係廃止の規則変更手続が適正に行われたか否かを調査し、変更手続が適正になされていないと判断したときは、包括宗教法人の所轄庁及び文部科学大臣に通知することができます(宗教法人法第26条4項)。

 

(4)所轄庁の認証手続

宗教法人内部での規則変更手続が終了し、かつ、包括宗教団体への通知を行った後(ただし、上記2(1)の通り、認証申請を行うには、公告から2か月以上経っていることが必要です。)、所轄庁に規則変更の認証の申請を行うことになります(宗教法人法第26条1項)。

この認証申請を行う場合には、通常の規則変更の場合に提出すべき書類に加えて、上記2(1)で述べた公告をしたことを証する書類及び上記2(2)で述べた包括宗教団体への通知を行ったことを証する書類を添えて、認証申請を行ことになります(宗教法人法第27条3号)。

所轄庁は、認証の申請を受理した場合においては、その受理の日を附記した書面でその旨を宗教法人に通知した後、当該申請に係る規則変更を認証すべきか否かの審査を行うこと(宗教法人法第28条)、当該申請に係る規則変更が要件を備えていると判断したときは、規則変更を認証する旨の決定を行わなければならないこと、これらの決定は当該申請が受理された時から3か月以内になされなければならないこと(宗教法人法第28条2項・第14条4項)等については、通常の規則変更の場合や被包括関係の設定の場合と同様です。

 

(4)被包括関係設定の効力発生

所轄庁が規則変更の申請を認証する決定を行い、認証書を宗教法人に交付した時に被包括関係設定の廃止の効力が生じることも(宗教法人法第30条)、通常の規則変更の場合や被包括関係の設定の場合と同様です。

 

(5)規則変更の登記

被包括関係の廃止は登記事項ですので(宗教法人法第52条2項4号)、登記を2週間以内に行わなければなりません(宗教法人法第53条)。

なお、この登記は対抗要件としての登記であり、被包括関係の廃止の効力自体は生じているのですが、それを登記しなければ、第三者には規則変更を対抗できないこと(宗教法人法第8条)も、通常の規則変更の場合や被包括関係の設定の場合と同様です。

    弁護士 荻野 伸一

宗教法人の管理・運営(6) (宗教法人規則の変更―2)

1.はじめに

前回は、宗教法人の規則の変更が必要となる3つの場合(①通常の場合、②被包括関係の設定を行う場合、③被包括関係の廃止を行う場合)のうち、①通常の規則変更の場合について述べました。今回は、②被包括関係の設定を行う場合の規則変更について述べたいと思います。

 

2.被包括関係の設定を行う場合の規則変更

(1)宗教法人内部の手続

被包括関係の設定は規則の変更事項ですので、通常の規則変更の場合と同様に、宗教法人の規則に定められている規則の変更手続に従って、被包括関係を設定する旨の決定を行います。

その後、規則の変更の認証申請の2か月前までに、信者その他の利害関係人に対して、規則の変更案の要旨を示して被包括関係を設定する旨を公告しなければなりません(宗教法人法第26条2項)。

この場合の公告方法は、規則に定める方法によります(宗教法人法第12条1項11号参照)。

 

(2)包括宗教団体の承認

また、被包括関係の設定を行う場合には、規則変更の認証の申請前に被包括関係を設定しようとする包括宗教団体の承認を受ける必要があります(宗教法人法第26条3項)。

 

(3)所轄庁の認証手続

宗教法人内部での規則変更手続が終了し、かつ、包括宗教団体の承認を得ると、所轄庁に規則変更の認証の申請を行うことになります(宗教法人法第26条1項)。

この認証申請を行う場合には、通常の規則変更の場合に提出すべき書類に加えて、上記2(1)で述べた公告をしたことを証する書類及び上記2(2)で述べた包括宗教団体の承認を受けたことを証する書類を添えて、認証申請を行ことになります(宗教法人法第27条)。

所轄庁は、認証の申請を受理した場合においては、その受理の日を附記した書面でその旨を宗教法人に通知した後、当該申請に係る規則変更を認証すべきか否かの審査を行うこと(宗教法人法第28条)、当該申請に係る規則変更が要件を備えていると判断したときは、規則変更を認証する旨の決定を行わなければならないこと、これらの決定は当該申請が受理された時から3か月以内になされなければならないこと(宗教法人法第28条2項・第14条4項)等については、通常の規則変更の場合と同様です。

 

(4)被包括関係設定の効力発生

所轄庁が規則変更の申請を認証する決定を行い、認証書を宗教法人に交付した時に被包括関係設定の効力が生じることも(宗教法人法第30条)、通常の規則変更の場合と同様です。

 

(5)規則変更の登記

被包括関係の設定は登記事項ですので(宗教法人法第52条2項4号)、登記を2週間以内に行わなければなりません(宗教法人法第53条)。

なお、この登記は対抗要件としての登記であり、被包括関係の設定の効力自体は生じているのですが、それを登記しなければ、第三者には規則変更を対抗できないこと(宗教法人法第8条)も、通常の規則変更の場合と同様です。

弁護士 荻野 伸一

宗教法人の管理・運営(5) (宗教法人規則の変更)

1.はじめに

宗教法人の規則は、宗教法人の目的、組織、管理運営の根本原則を定めるものです。そのため、宗教法人の規則と宗教法人の運営とは常に一致させておくことが必要です。しかしながら、規則の作成時からの時間の経過やその他の事情の変更等により、規則の変更が必要となる場合があります。規則の変更が必要となる場合としては、①通常の場合、②被包括関係の設定を行う場合、③被包括関係の廃止を行う場合、が考えられますが、以下では、①通常の場合の規則変更について述べたいと思います。

 

2.通常の場合の規則変更

(1)はじめに

通常、規則変更が必要となる場合としては、責任役員の定数の変更、事務所の移転、宗教法人が公益事業や公益上業以外の事業を開始する場合(宗教法人法第6条参照)等が考えられます。

このような規則変更を行う場合には、大きく分けて2つの手続、すなわち、①宗教法人内部の手続、②認証手続が必要となります(宗教法人法第26条1項)。

 

(2)宗教法人内部の手続

宗教法人法は、宗教法人の「規則の変更に関する事項」を規則に定めるべきものとし(宗教法人法第12条1項9号)、また、宗教法人が規則を変更する場合は、「規則で定めるところによりその変更のための手続をし」なければならないとしています(宗教法人法第26条1項)。

具体的に、どのような内部手続が必要となるかは、各宗教法人の規則の定めるところによりますが、一般的には、①責任役員(会)の議決、②総代(信徒代表)の同意、③宗派の代表役員の同意(被包括宗教法人の場合)等を要すると定められていることが多いと思われます。

 

(3)所轄庁の認証手続

宗教法人内部での規則変更手続が終了すると、所轄庁に規則変更の認証の申請を行うことになります(宗教法人法第26条1項)。

この認証申請を行う場合には、①認証申請書(所轄庁に認証申請書のひな形が用意されているのが通常です)、②規則「変更しようとする事項を示す書類」を2通、③「規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類」を所轄庁に提出します(宗教法人法第27条)。

所轄庁は、認証の申請を受理した場合においては、その受理の日を附記した書面でその旨を宗教法人に通知した後、当該申請に係る規則変更を認証すべきか否かの審査を行うことになります(宗教法人法第28条)。所轄庁が審査を行うのは、①その変更しようとする事項が宗教法人法その他の法令の規定に適合していること、②その変更の手続が宗教法人法第26条の規定に従ってなされていること、の2点(宗教法人法第28条1項1号、2号)で、規則の変更内容の当否には及びません。

所轄庁は、当該申請に係る規則変更が上記2つの要件を備えていると判断したときは、規則変更を認証する旨の決定を行わなければなりません。また、所轄庁が当該申請に係る規則変更が上記2つの要件を備えていないと判断したときは、規則の変更を認証しない旨の決定をすることになります(宗教法人法第28条1項)。なお、これらの決定は当該申請が受理された時から3か月以内になされることになっています(宗教法人法第28条2項・第14条4項)。

 

(4)規則変更の効力発生

通常の規則変更は、所轄庁が規則変更の申請を認証する決定を行い、認証書を宗教法人に交付した時に効力が生じます(宗教法人法第30条)。

 

(5)規則変更の登記

通常の規則変更の手続は、所轄庁から認証書の交付を受けて完了しますが、規則変更の対象となる事項が宗教法人法第52条2項各号に記載されている事項(例えば、宗教法人の目的、名称、事務所の所在場所等)である場合は、その事項を変更する旨の登記を2週間以内に行わなければなりません(宗教法人法第53条)。

なお、この登記は対抗要件としての登記であり、規則変更の効力自体は生じているのですが、それを登記しなければ、第三者には規則変更を対抗できないこととなります(宗教法人法第8条)。

また、登記した後は、「遅滞なく、登記事項証明書を添えて、その旨を所轄庁に届け出なければな」りません(宗教法人法第9条)。

    弁護士 荻野伸一

 

宗教法人の管理・運営(4) (宗教法人の有する情報の取り扱い)

1.はじめに

宗教法人が保有している情報の中には、人の秘密が含まれているものがあります。また、宗教法人は、通常、多くの信者を有するため、多くの人々の個人情報を保有していると考えられます。

そこで、以下では、宗教者の守秘義務及び個人情報保護法の概略について(2017年5月30日施行予定の改正法を中心に)述べたいと思います。

 

2.宗教者の守秘義務

「宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは」6か月以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられます(刑法134条2項)。

ここにいう「秘密」とは、一般には知られていない事実であって、一般人であれば他人に知られたくない事実を言います。信者の名簿、寄付者名簿、現在帳、過去帳、年回忌一覧等は、秘密に当たると考えておかれた方がよいと考えられます。

また、秘密を「漏らす」とは、秘密を知らない他人に当該事実を知らせることを言い、方法の如何を問いませんし、固く他言を禁じて告げた場合も「漏らした」ことになります。

なお、本人の承諾がある場合や法令により届出が義務付けられているような場合には、「正当な理由」があります。

 

3.個人情報の保護

(1)個人情報保護法の適用について[1]

宗教法人は、「個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置、個人情報の取扱いに関する苦情の処理その他の個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならない」とされています(個人情報保護法76条3項)。

しかし、宗教法人が、その保有する個人情報等を「宗教活動(これに付随する活動を含む。)の用に供する目的」で取り扱う場合は、個人情報保護法の第4章が適用されず、主務大臣から勧告を受けたり、その他罰則の対象にはなりません(個人情報保護法76条1項4号)。もっとも、宗教法人が公益事業や公益事業以外の事業(宗教法人法6条参照)に利用する個人情報を有していると、個人情報保護法の第4章も適用され、主務大臣から勧告を受けたり、その他罰則の対象になります(個人情報保護法2条5項参照)。

なお、改正前の個人情報保護法では、5000人を超える個人情報を保有する場合のみが個人情報保護法の適用対象でした(旧法2条3項5号、旧施行令2条)が、平成29年5月30日以降は、5000人以下であっても個人情報保護法が適用されますので注意が必要です。

 

(2)個人情報の取扱いにおける注意事項

改正後の個人情報保護法では、「個人情報」の定義が明確化されました。

「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含みます。)及び個人識別符号(指紋やマイナンバー等)を含むものをいいます(個人情報保護法2条1項、2項)。なお、個人情報の中でも、「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、 犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの」を「要配慮個人情報」といい(個人情報保護法2条3項)、要配慮個人情報については原則として本人の同意なしに取得することはできない(個人情報保護法17条2項)等、規制が厳格化されています。

個人情報は、宗教法人が保有するものであっても、その人個人のものですから、あらかじめ特定して公表している利用目的を離れて利用したり、第三者に提供したりする場合には本人の同意が必要となります。また、本人の同意を得て、第三者に提供する場合でも、その提供の記録を作成しなければなりません(個人情報保護法25条)。

また、本人から、情報の開示、訂正、削除、利用の停止、消去、第三者への提供の停止等の要求があった場合は、誠実に調査・対応しなければなりません(個人情報保護法28条~34条)。

個人情報保護法の詳細については、また別の機会に述べたいと思います。

[1] 2005年に制定された個人情報保護法が改正され、2017年5月30日に改正法が施行される予定です。条文番号は改正後のものを示しています。

 

弁護士 荻野伸一

宗教法人の管理・運営(3) (宗教法人の備付書類)

前回までは、宗教法人の管理運営の前提となる宗教法人の機関について述べてきましたが、今回は宗教法人の備付書類について述べたいと思います。

 

1.備付書類について

宗教法人法では以下の書類及び帳簿を作成して事務所に備え付けなければならないとされています(宗教法人法25条1項、2項)。なお、備え付ける書類等は、原則として最新のものでなければなりません。

(1)規則及び認証書

まず、所轄庁の認証を受けた宗教法人の規則の原本を事務所に備え付けておかねばならないとされています(宗教法人法25条2項1号)。備え付けておかなければならないのは、最新の規則(変更認証を受けた場合は,その都度変更した内容を反映させたもの)の全文です。

なお、規則及び認証書を紛失した場合は、所轄庁から規則及び認証書の謄本の交付を受けて、それを備え付けるようにしてください。

(2)役員名簿

宗教法人の役員名簿についても事務所に備え付けなければならないとされています(宗教法人法25条2項2号)。役員名簿を備え付けなければならないとされたのは、宗教法人の運営に責任を負う人を明らかにするためです。

宗教法人は、役員名簿に記載しなければならない役員としては、代表役員、責任役員のほか、規則で定める機関等で、監事も含みます。

(3)財産目録、収支計算書、貸借対照表

ア.財産目録

宗教法人は、設立(合併に因る設立を含む。)の時と、毎会計年度終了後三月以内に財産目録を作成し、事務所に備え付けなければならないとされています(宗教法人法25条1項、2項3号)。これは、宗教法人の財産管理の適正を図るためです。

財産目録には、宗教法人の全ての財産、すなわち資産(土地、建物、現金、預金等)と負債(借入金等)の明細を記載しなければなりません。

イ.収支計算書

宗教法人は、毎会計年度終了後三月以内に収支計算書を作成し、事務所に備え付けなければならないとされています(宗教法人法25条1項、2項3号)。

収支計算書とは、宗教法人の会計年度における収入と支出を表に記載したものです。

なお、収支計算書は、公益事業以外の事業(宗教法人法6条2項参照)を行っていない場合で、一会計年度における収入が8000万円以下の場合は作成を免除されています(宗教法人法附則23項、平成8年文部省告示第116号)。

ウ.貸借対照表

貸借対照表とは、会計年度末時点における宗教法人の財産を貸方(資産)と借方(負債及び資本)に分けて記載した表です。

宗教法人が、貸借対照表を作成するか否かは任意ですが、作成している場合は、これを事務所に備え付けなければならないとされています(宗教法人法25条2項3号)。

(4)境内建物(財産目録に記載されているものを除く)に関する書類

境内建物に関する書類も事務所に備え付けるものとされています(宗教法人法25条2項4号)。この書類には、敷地を異にする境内建物毎に、その名称、所在地、面積、用途、貸借関係を記載しますが、宗教法人が所有する境内建物については、財産目録に記載されますので、境内建物に関する書類に記載する境内建物は、他人から借りている境内建物のみということになります。

(5)責任役員その他規則で定める機関の議事に関する書類及び事務処理簿

責任役員会等の議事録についても事務所に備え付けなければならないとされています(宗教法人法25条2項5号)。

(6)公益事業及び公益事業以外の事業に関する書類

宗教法人は、宗教活動以外に、公益事業及び公益事業以外の事業を行うことができるとされており(宗教法人法6条)、公益事業及び公益事業以外の事業を行う場合は、それらの事業に関する書類を事務所に備え付けなければならいとされています(宗教法人法25条2項6号)。

 

2.備付書類の閲覧請求

宗教法人は、信者その他の利害関係人で閲覧することに正当な利益があり、閲覧請求の目的が不当な目的でない者から請求があった場合は、備付書類を閲覧させなければなりません(宗教法人法25条3項)。なお、閲覧請求の対象となるのは、宗教法人法25条1項、2項の備付書類のみで、それらの書類作成の元となった帳簿等は対象外です。

閲覧請求を認めるか否かの判断は、第一次的には宗教法人が行うこととなりますが、閲覧請求者が宗教法人の判断に納得が否かない場合は、裁判所に訴えることができますので、宗教法人はこれらの事情を考慮した上で、閲覧を認めるか否かの判断を行うことになります。いずれにしても、閲覧を認めるか否かの判断は困難を伴う場合も多いので、迷われた場合は弁護士等に相談されることをお勧めします。

 

3.備付書類の提出義務

宗教法人は、備付書類のうち、①役員名簿、②財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表、③境内建物(財産目録に記載されているものを除く。)に関する書類、④公益事業や公益事業以外の事業を行う場合には、その事業に関する書類の写しを、毎会計年度終了後4か月以内に、所轄庁に提出しなければならないとされています(ア宗教法人法25条4項)。

これらの書類の提出を怠った場合は、宗教法人の代表者は10万円以下の過料に処せられることとなりますので(宗教法人法88条5号)、ご注意ください。

 

弁護士 荻野伸一

宗教法人の管理・運営(2)(宗教法人の機関の選任・解任等について)

前回は、宗教法人の機関の概略について述べましたが、今回は宗教法人の機関の選任・解任等について述べたいと思います。

 

1.責任役員の選任について

宗教法人法には責任役員の選任に関する規定はなく、「代表役員、責任役員(中略)の任免並びに代表役員についてはその任期及び職務権限、責任役員についてはその員数、任期及び職務権限(中略)に関する事項」を記載した規則を作成しなければならないとし(宗教法人法12条1項5号)、責任役員等の選任については各宗教法人が定めることとしています。

したがって、責任役員、代表役員の選任は宗教法人の規則に従ってなされることとなります。

なお、規則に責任役員の選任方法について定められていないときは、慣行や申し合わせ等によらざるを得ず、また、代表役員の選任方法が定められていない場合は、責任役員の互選によって決めることとなります(宗教法人法18条2項)。

 

2.責任役員の退任、辞任、解任について

責任役員の退任、辞任、解任について、宗教法人の規則に定めがある場合にはその定めに従うこととなります(宗教法人法12条1項5号参照)。

しかし、規則に定めがない場合は、宗教法人と責任役員との関係は委任契約ないしは準委任契約と解されますので、民法の委任ないし準委任の規定に従うこととなります。

まず、退任についてですが、退任とは一定の事由の発生によって当然に責任役員の地位を失うことをいい、退任事由としては、任期の満了、死亡・破産手続の開始決定(民法653条)等があります。

次に、辞任とは責任役員が自己の意思に基づいて任期の途中で責任役員の地位を退くことをいいます。責任役員は、宗教法人の規則に制限がない限り、いつでも辞任することができますが、宗教法人に不利な時期に辞任をし、そのために宗教法人が損害を被った場合は、やむを得ない事由が無い限り、その損害を賠償しなければなりません(民法651条)。また、辞任後、後任者の職務執行が可能となるまでは、規則に定めがある場合はそれに従い、規則に定めがない場合でも、緊急に処理を要する事項がある場合には、その処理を行う等しなければなりません。

最後に、解任とは責任役員の意思にかかわりなく、その任期中に、責任役員の地位を失わせることをいいます。解任についても、規則に定めがある場合はそれに従わなければなりませんが、定めがない場合は民法の委任契約の解除に関する規定(民法651条)に従うこととなります。また、責任役員を解任する場合の宗教法人内部の手続きとしては、規則に定めがある場合はそれに従いますが、規則に定めがない場合は、「宗教法人の事務」として、「責任役員の定数の過半数で決」することになると考えられます(宗教法人法19条)。なお、この場合の責任役員の議決権は各々平等です(同条)。したがって、責任役員会において、解任しようとする責任役員を除く責任役員の過半数の決議により、責任役員の解任を決めることとなります。

以上のとおり、責任役員の退任、辞任、解任のいずれについても、宗教法人の規則に定めがある場合はそれに従い、定めがない場合は民法の委任ないしは準委任に関する規定に従うこととなるのが原則です。

 

3.代務者の選任、退任について

代務者とは、代表役員や責任役員が何らかの事情により欠けた場合や長期間職務を行うことができない場合に置かれる代行者です(宗教法人法20条)。

代務者の選任方法については、宗教法人の規則に定めなければならないとされていますので(宗教法人法12条1項5号)、代務者の選任については規則の定めに従ってなされることとなります。

また、代務者の任期についてですが、代務者の任期は代務者を置くこととなった事情が存続している間となりますので、その事情がなくなれば任期は終了し、代務者は当然に退任することとなります。

 

4.仮代表役員、仮責任役員の選任、退任について

仮代表役員及び仮責任役員は、代表役員や責任役員の個人の利益と宗教法人の利益とが対立するような場合に、宗教法人の運営が宗教法人の利益に沿って行われるようにするために置かれる機関です(宗教法人法21条)。

仮代表役員及び仮責任役員の選任方法については、宗教法人の規則に定めなければならないとされていますので(宗教法人法12条1項5号)、仮代表役員及び仮責任役員の選任については規則の定めに従ってなされることとなります。

また、仮代表役員及び仮責任役員の任期は、選任の理由となった利害相反事項が処理されれば終了し、そこで退任することとなります。

弁護士 荻野伸一

宗教法人の管理・運営(1)(宗教法人の機関の概要)

今回からは、宗教法人の管理・運営について問題となりうる事項について述べていく予定ですが、今回はその前提として宗教法人の機関の概略について述べたいと思います。

 

1.はじめに

  宗教団体は、宗教法人法に基づいて宗教法人となることによって、法律上権利能力が与えられ、宗教団体(宗教法人)の名前で財産を所有・管理したり、契約をしたりすることができるようになります。この宗教法人は、住職や檀徒などの個人とは全く別の独立した存在ですので、団体としての目的を実現するために、団体を管理・運営する機関が必要となります。

 

2.責任役員、代表役員

宗教法人が必ず設置しなければならない基本的な機関については、宗教法人法が定めています。具体的には、宗教法人は、3人以上の責任役員を置かなければならず、その中から代表役員1人を定めなければなりません(宗教法人法18条1項)。

(1)責任役員

  責任役員は、「宗教法人の事務」の決定を行うための機関です。

ここにいう「宗教法人の事務」とは、第三者との取引や財産の管理など世俗的な業務の一切をいいます。「宗教法人の事務」については、宗教法人の規則に定めがない限り、責任役員の定数の過半数で決定を行います(宗教法人法19条)。この決定方法についてですが、責任役員の会議体である責任役員会の設置について、宗教法人法は何らの定めも置いてていませんので、いわゆる持ち回り決議で行っても問題はありません。

なお、法律上、責任役員は総代や信徒に限定されていませんので、信者でない者から選ぶことも可能です。

(2)代表役員

  上記の通り、「宗教法人の事務」の決定は責任役員が行いますが、責任役員の決定を執行する機関として代表役員を置く必要があります。

代表役員は、宗教法人を代表し、宗教法人の事務を総理する者をいい(宗教法人法18条3項)、責任役員の中から選任されます。また、代表役員は必ず1人に限られます。

代表役員は、あくまでも責任役員が決定した事項を執行する為の機関ですから、代表役員が「宗教法人の事務」を独断で決定することはできません。

 

3.代務者、仮代表役員、仮責任役員

  上記の責任役員及び代表役員のほかに、宗教法人法は、一定の場合に、代務者、仮代表役員、仮責任役員を置かなければならないと定めています(宗教法人法20条、21条)。

(1)代務者

  代務者とは、代表役員や責任役員が何らかの事情により欠けた場合や長期間職務を行うことができない場合に置かれる代行者で、宗教法人の事務が停滞し、宗教法人自身や第三者に悪影響をもたらすことを事前に防止することを目的としています。

宗教法人法20条は代務者を置く場合を2つ定めています。すなわち、①代表役員又は責任役員が、死亡や辞任などで欠けた場合で、 速やかにその後任者を選ぶことができないとき、及び②代表役員又は責任役員が、病気や長期旅行などで三月以上その職務を行うことができないときに代務者を置かなければならないとしています。

(2)仮代表役員、仮責任役員

  仮代表役員及び仮責任役員も代務者と同様、代表役員や責任役員に代わってその職務を行うものですが、代務者が上記3.(1)のように、緊急の場合に臨時に置かれるものであるのに対し、仮代表役員及び仮責任役員は、代表役員や責任役員の個人の利益と宗教法人の利益とが対立するような場合に、宗教法人の運営が宗教法人の利益に沿って行われるようにするために置かれる機関です。

ア 仮代表役員

  代表役員は「宗教法人と利益が相反する事項」については宗教法人を代表することができません(宗教法人法21条1項)。ここにいう「宗教法人と利益が相反する事項」とは、例えば、法人所有の財産を代表役員が個人の立場で購入する場合、代表役員所有の財産を法人に 有償で譲渡する場合、代表役員が法人から金銭の貸付けを受ける場合、 代表役員個人の債務のために法人の財産を担保に供する場合などです。

このように代表役員と法人の利益が相反する場合には、宗教法人の利益のために、仮代表役員を選任しなければならず、仮代表役員は代表役員に代わって業務執行を行うことになります。

イ 仮責任役員

  責任役員は、宗教法人の意思を決定する機関ですが、「特別の利害関係がある事項」については議決権がありません(宗教法人法212項)。ここにいう「特別の利害関係がある事項」とは、責任役員個人と法人の利益が相反する事項をいい、具体的には、特定の責任役員の人事、特定の責任役員が法人職員として受ける報酬や退職金の決定、法人と責任役員間の訴訟などの事項です。

このように、責任役員個人が特別の利害関係を有する事項の決定については、当該責任役員は議決権を有しませんので、仮責任役員を選任することとなります。

 

4.その他の機関

   上記2.及び3.記載の機関以外に、総代、総会等の議決機関、顧問会等の諮問機関、監事等の監査機関などを置かれている宗教法人も多いと思いますが、これらの機関は、宗教法人法上、必ず置かなければならない機関ではなく、各宗教法人の規則に定めることにより、任意に置くことのできる機関です。

 

弁護士 荻野伸一

貸付地の管理について(3)

今回は建物所有を目的とする土地の賃貸借契約に適用される特別法及び契約書を作成される際にご留意いただきたい事項について述べたいと思います。

 

1.借地法・借地借家法

(1)借地法と借地借家法

建物所有を目的とする土地の賃貸借契約には、借地法(大正10年4月8日法律第49号)ないしは借地借家法(平成3年10月4日法律第90号)が適用され、特別の制限が課されています。借地借家法は平成4年8月1日に施行され、それまでは借地法が適用されていましたが、借地法は借地借家法の施行に伴い廃止されました。もっとも、平成4年8月1日よりも前に締結された賃貸借契約には、現在でも旧借地法が適用される場合があります。

(2)借地法と借地借家法との重要な差異

借地借家法と借地法との重要な差異としては、借地権の存続期間、更新の排除の可否、賃貸借契約を解約する場合の正当事由の3つがあります。

ア.存続期間

旧借地法が適用される場合、賃貸借契約で借地期間を定めていなければ、借地期間は、堅固建物(例えば、鉄筋コンクリート造りの建物等)所有の場合は60年、その他の建物(例えば、木造の建物)所有の場合は30年とみなされます(借地法2条1項)。他方、借地借家法が適用される場合は、賃貸借契約で借地期間を定めていなければ、借地期間は30年となります(借地借家法3条)。

また、期間満了による更新後の借地期間について、旧借地法は、堅固建物は30年、その他の建物は20年、当事者がそれ以上の期間を定めた場合はその期間としていますが(借地法5条)、借地借家法は、最初の更新後は20年間、2回目以降の更新後は10年間、当事者がそれ以上の期間を定めた場合はその期間としています(借地借家法4条)。

イ.更新の排除の可否

旧借地法下では更新を排除する特約は認められていませんでしたが、借地借家法下では、賃貸借契約において、借地期間を50年以上と定める場合は、賃貸借契約の更新を排除する合意をすることができます(定期借地権)。この合意をする場合は、公正証書などの書面で行う必要があります(借地借家法22条)。このように更新を排除するものとしては、この他にも事業用定期借地(借地借家法23条)、建物譲渡特約付借地(借地借家法24条)等があります。

ウ.賃貸借契約を解約する場合の正当事由

借地借家法6条は、地主が賃貸借契約を解約しようとする場合正当事由が必要であるとし、その正当事由の存否を判断する際の具体的な基準を列挙しています。これに対し、旧借地法はこの正当事由について「土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合」(借地法4条1項但し書)という抽象的にしか規定していませんでした。

もっとも、借地借家法6条の「正当事由」の有無を判断する際の基準は、それまでの判例を成文化したものですので、旧借地法が適用される場合も、借地借家法6条と同様の基準で判断されることになります。

 

2.契約書を作成する際に留意いただきたい主な事項

最後に、建物所有を目的とする賃貸借契約について契約書を作成される際にご留意いただきたい主な事項について述べたいと思います。

(1)借地権の存続期間

上記1(2)アで述べた通り、借地借家法は、借地権の存続期間は30年とし、それよりも長い期間を定めた場合はその期間が存続期間となるとしていますので(借地借家法3条)、借地期間を30年以上としたいのであれば、存続期間を契約書に明記するべきです。

また、借地借家法は、賃貸借契約更新後の借地権の存続期間について、最初の更新後は20年間、2回目以降の更新後は10年間とし、当事者がそれ以上の期間を定めた場合はその期間としていますので(借地借家法4条)、更新後の借地権の存続期間を借地借家法の規定する期間よりも長くしたい場合は、その期間を契約書に明記しておくべきです。

(2)更新料の支払を承諾する旨の定め

借地権の存続期間が満了となる場合は、借地上に建物があり、かつ、借地権者が契約の更新を請求または借地権者が土地の使用を継続する場合は、地主がそれに異議を述べない限り、賃貸借契約は自動的に更新されます(借地借家法5条1項、2項)。この契約更新の際に、更新料の支払いを受けたい場合には、更新料の支払いを承諾する旨の特約を契約書に明記するべきです。また、この特約を設ける場合、更新料の額については、できる限り具体的に記載するべきです(例えば、「賃貸借契約更新時の借地権価格の〇パーセントの割合に相当する額」等)。

なお、更新料支払特約については、「貸付地の管理(2)」の2でも述べた通り、その有効性について疑義はあるものの、最高裁判所は借家契約についてのものですが更新料支払特約の有効性を認めています。

(3)借地条件の変更を制限する定め

賃貸借契約に借地条件(借地人が借地上に所有する建物の種類、構造、規模、用途等)が定められていない場合は、借地人は借地権の存続期間中、自由に建物の種類、構造等を変更できることになります(借地借家法17条参照)。

したがって、借地条件の変更を制限したい場合には、借地条件の変更を制限することを契約書に明記する必要があります。なお、借地条件の変更を制限する定めがある場合、借地人が地主の承諾に代わる許可を裁判所に申し立てる制度があることは、「貸付地の管理(2)」の4で述べた通りです。

(4)無断増改築を禁止する定め

賃貸借契約に無断増改築を禁止する定めを設けていない場合、借地人は借地権の存続期間中、建物の増改築を自由に行うことができることになります。

したがって、借地人による自由な増改築を制限したい場合には、無断増改築を制限することを契約書に明記する必要があります。なお、借増改築を制限する定めがある場合、借地人が地主の承諾に代わる許可を裁判所に申し立てる制度があることは、「貸付地の管理(2)」の5で述べた通りです。

(5)その他

上記以外にも契約書を作成される際に留意いただきたい事項は多々ありますので、契約書を作成される場合にはご注意ください。

3.最後に

貸付地の管理について3回にわたり述べてきましたが、これまで述べた以外にもご注意いただきたい事項が多くあります。何らかの問題が起こってから弁護士にご相談に来られる方が多いのですが、問題が起こらないようにするのが最善ですので、判断に迷われた場合はもちろん、何らかの判断をされる場合には事前に弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士 荻野伸一