弁護士 牧野誠司

フィラデルフィア

最近,弁護士の数が増加して,司法試験に合格しても就職先すら見つからない可能性があるという状況になってきて,弁護士を目指す人が減ってきていますが(司法試験のために,数百万円の学費を費やして,数年間朝から晩まで勉強しても,結局就職できないなんてたまったもんじゃないですからね),こういった「弁護士モノ」の映画やドラマがまだまだ減ってないところを見ると,一応,世間的にはまだ興味深い仕事と思ってもらっているのかもしれないなと思います。

 

そんな「弁護士モノ」の映画の中でも,特に名作と言われ映画史に燦然と輝いているのが,フィラデルフィア。トムハンクスとデンゼルワシントンが共演しているというだけでテンションが上がりますが,トムハンクスはこの映画でアカデミー主演男優賞を受賞するほどの熱演を見せていて,このトムハンクスを見るためだけでもこの映画を見る価値があると言っても過言ではないかもしれません。

 

この映画の中で,弁護士であるトムハンクスは,「弁護士という仕事のどういったところが好きですか?」と聞かれて,「ほんとに稀ではあるけれど,ときどき,自分が正義の一部を担っているように思えることがあるんです。そういったときは,感動しますね。」というふうに答えるわけですが,こういったセリフに感じ入ってこの職業を選んでくれる若手が増えるのは,我々にとって嬉しいことですね。

 

しかし,実際のところは,正義というのも結局は相対的なもので,立場が変われば正義も変わるんじゃない?という疑問もあるでしょうし,そんなに簡単なものではないですよね。だからこそ,さっき引用したトムハンクスの台詞でも,「ほんとにたま~に,そんな風に,正義の一部になっていると感じるときがあるんです」と,かなり控えめな表現が取られてます。また,この映画の中の他の場面では,「弁護士が5000人くらいが海に沈んで死んだとしたら,あんたはなんて言いうかね?」っていうなぞかけ(アメリカンジョークですね)に対して,「手始めとしては悪くないね」ってな返答がなされてます(英語だと,問: What do you call 5000 dead lawyers at the bottom of the ocean?  答え: A good start! ですね)。つまり,単なる弁護士礼賛映画ではなくて,弁護士ってどうなんだ?実際は正義なんて関係ないんじゃないか?という疑問を基本にしつつ,「でもやっぱりね・・・」という映画になっているわけですね。弁護士という仕事に世の中の興味が消えないのも,こういった矛盾というか,明るい面と暗い面の両方があるように見えるから,面白いと思ってもらっているのかもしれません。

 

実際のところ,弁護士というのは,確かに紛争やもめ事を象徴している存在なので,世間の皆さんは「弁護士⇒もめ事」と思われがちですが,我々が声を大にして言いたいのは,「弁護士は,もめ事を起こしてるわけじゃなくて,もめ事の『後で』登場している」ということなんですよね。弁護士は,当事者の代わりに表舞台に出て,もめ事に関わるので,どうしても「弁護士⇒もめ事」と思われがちで,だから,「弁護士が5000人海に沈めば世の中良くなる」と言われたりするわけですが,ほんとは,弁護士がもめ事をスタートさせることなんてほとんどなくて,既にもめ事があるから(あるいは将来もめ事が起こりそうだから),その解決又は予防のために弁護士が登場するわけです。なので,ほんとは「弁護士⇒もめ事」ではなくて,「もめ事⇒弁護士(法)⇒解決・予防」なんですよね。もめ事を平和的にあるいは正義に基づいて解決・予防するために弁護士が関係するんであって,もめ事の発生原因が弁護士にあるわけじゃないわけです。なので,世の中から弁護士がいなくなって,「もめ事⇒力による解決」になっちゃったら,弱肉強食の世界になりますから,正義や平和はどんどん遠くなっていくのじゃないかなというのが,現在の法制度の考え方なわけですね(かつてアニメのタイガーマスクが,「力は正義ではない!正義は力だ!」って言ってたのも同じですね。いや,違うか。)

 

とすると,逆に言うと,弁護士が,平和や正義のための解決ではなくて,その資格を利用して,もめ事をどんどん大きくしてお金を稼ぐことだけを目的にする存在になっちゃったら,弁護士の存在意義なんて全くないんでしょうね。だから,日本の弁護士法の第1条には,「弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする」と定められているんだと思います。とはいえ,貧すれば鈍するというように,弁護士が就職難や低収入に悩まされるようになったら,平和や正義だけのために動けるのかどうか,ですね。まぁ,動かないと,なんといっても弁護士法1条違反で違法ですので,弁護士は頑張るしかないですが。

 

 

 

 

牧野 誠司

弁護士牧野 誠司

どのような事件に対応させていただくときでも、「牧野弁護士に依頼して良かった」と言っていただけるよう、そのご依頼者のために最良の解決を目指して努力させていただくことを日々の指針としています。

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