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プログラムの著作物性

第1 著作権法上プログラムが著作物として例示されていること

 

著作権法は、著作権の対象となる「著作物」について、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいうと定義しています(2条1項1号)。そして、著作権法は、10条1項各号に、著作物の例示規定を設けており、同項9号では、プログラムの著作物が例示されています。

 

同法2条1項10号の2によれば、「プログラム」とは、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。」とされています。

 

このプログラムにあたるというためには、コンピュータに対する指令の組み合わせとしての性格を有するものであればよく、OSやアプリケーション・ソフト、家電製品に組み込まれたプログラムなど、その用途や種類は問わないとされています。また、プログラム言語で記述された、人間が読み取り可能な状態であるソースプログラムも、機会が読み取り可能な言語である直接機械語で作成されたオブジェクトプログラムも、いずれもプログラムにあたるとされています(島並良・上野達弘・横山久芳「著作権法入門」(有斐閣、2021年)59頁)。

 

ただし、著作権法は、プログラムの作成に用いられるプログラム言語、規約、解法には著作権の保護は及ばないと規定しています(10条3項)。これらは、さまざまなプログラムの創作に応用可能な汎用性の高いものであり、著作権法により長期間の独占を認めることは産業上の弊害が大きいため、著作権法による保護を及ぼすべきではないと考えられているのです。

 

第2 プログラムが著作物に該当するには創作性が必要であること

 

第1で述べた通り、著作権法上、著作物に該当するためには、思想又は感情を「創作的に表現」したものが必要であるとされています(「創作性」の要件)。したがって、プログラムの性質上、採用することが不可避な表現やありふれた表現については、創作性が否定されます。

 

裁判例を見ると、コンピュータ・プログラムの著作権侵害が争われたシステムサイエンス事件の抗告審決定(東京高決平成元・6・20判時1322号138頁)では、以下の通り判示されています。

・ 「プログラムはこれを表現する記号が極めて限定され、その体系(文法)も厳格であるから、電子計算機を機能させてより効果的に一の結果を得ることを企図すれば、指令の組合せが必然的に類似することを免れない部分が少なくないものである。したがって、プログラム著作物についての著作権侵害の認定は慎重になされなければならない。」

・ 「あるプログラムがプログラム著作物の著作権を侵害するものと判断し得るためには、プログラム著作物の指令の組合わせに創作性を認め得る部分があり、かつ、後の作成されたプログラムの指令の組合わせがプログラム著作物の創作性を認め得る部分に類似している事が必要であるのは当然であるが、CA-7Ⅱプログラムのうち抗告人が指摘する部分には、指令の組合わせに創作性を認め得ることは疎明されていない。」

 

また、同裁判例以後も、サイボウズ事件判決(東京地判平成14・9・5判時1811号127頁)は、「サイボウズoffice2.0」というビジネスソフトのプログラムについて、「多様な制約が存在することから、作成者の思想・感情を創作的に表現する範囲は限定されており、創作的要素が認められるとしても画面における部分的な範囲に存在するにとどまる」と判示し、また、創作的要素が認められる部分についても、いわゆるデッドコピーに準ずるような場合でなければ、著作権侵害は認められないと判示しました。

 

要求された仕様や目的から合理的にプログラムを行おうとすると、プログラムの表現の幅が極めて狭くなってしまうため、どうしても創造性の程度としては低いと評価されてしまうこととなるため、プログラムについて著作物性を認めるハードルは高くなってしまうということがわかります。

 

第3 終わりに

 

今回は、プログラムの著作物性の要件や、著作物性が否定された事例について簡略にご紹介しましたが、今後、著作物性が認められた事例についてもご紹介できればと考えています。

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