弁護士野田俊之

ペットと法⑩-ペットホテルにまつわる法的問題

今回は、ペットホテルに関する契約の法的性質やペットホテルに関して問題となりうる事例について紹介いたします。

 

1 ペットホテルを開業するには

 

そもそも、ペットホテルとは、飼主が旅行や出張などの事情のために、ペットの世話を見ることができない場合に、一定期間ペットを預かってくれる施設のことを言います。

 

そして、ペットホテルを開業するにあたっては、飼主からペットを預かることになりますので(保管業)、「第一種動物取扱業者」として、都道府県知事又は政令指定都市の市長の登録を得る必要があります(動物の愛護及び管理に関する法律第10条1項)。

 

2 ペットホテル契約の法的性質

 

ペットホテルの利用においては、ペットホテルが、飼主から、ペットを預かりペットの世話を行うことになりますので、法的には、飼主とペットホテルとの間で「寄託契約」という契約が成立したと整理することができます。

この寄託契約というのは、受寄者が、寄託者のために保管することを約して、ある物を受け取ることにより成立する契約のことですが(民法第657条以下)、飼主とペットホテルとの間では、ペットホテル(受寄者)が飼主(寄託者)のためにペットを保管するという約束でペットを預かることにより、この寄託契約が成立したと言うことができます。

 

そして、飼主とペットホテルとの間の契約が寄託契約に該当することから、契約に別段の定めがない限り、以下の法的効果が生じることとなります。

 

ペットホテル(受寄者)は、飼主(寄託者)から預かったペットについて、善良な管理者の注意をもって保管する義務(「善管注意義務」といいます。)を負う(民法第659条の反対解釈、民法第400条)

 

※なお、この点について、民法上、寄託契約は、原則として無報酬とされており(民法第665条・第648条第1項)、無償の寄託契約については、受寄者は、「自己の財産に対するのと同一の注意」をもって、目的物を保管すれば足りるとされています(民法第659条)。

しかしながら、ペットホテルとの契約が無償であることは考えられませんので、上記の通り、ペットホテルは、飼主に対して、善管注意義務を負うのが通常でしょう。

 

②ペットホテルは、飼主の承諾がなければ、寄託物(ペット)を使用することができない(民法第658条第1項)

 

※なお、同条に関して、現行民法においては、受寄者は、寄託者の承諾がなければ、目的物を第三者に保管させることができないと規定されておりますが(再寄託の禁止。民法第658条第1項)、この点については、先般の民法改正により、寄託者の承諾を得た場合、又は、やむを得ない事由がある場合に、第三者に保管させることができるとの規定に改正されました(新民法第658条第2項)。

 

3 ペットホテルに関する法的トラブル 

 

ペットホテルの利用にあたっては、例えば以下のような法的トラブルが生じることが考えられます。

 

■ケースⅠ

Aさんが、ペットホテルのBに、ペットの犬を預け、翌日ペットを引き取りに行ったところ、ペットの犬が骨折していた。

この場合、Aさんは、Bに対して、治療費等を請求することはできるか。

 

上述の通り、ペットホテルBは、飼主であるAに対して、善良な管理者の注意をもってペットを保管する義務を負っているものと考えられます。

そして、この善管注意義務については、実務上一般に、その人と同じ職業や社会的地位に属する平均的な人に対して一般的に要求される水準の注意義務と解されています。

 

この点について、過去の裁判例は、上記事例と同じく、原告がペットホテルに犬を預けたところ、犬が骨折していたという事案において、「被告は、犬を預かることを営業としており、その業務に関しては、一般人よりも高度の注意義務を負っていると認められ、被告は、その業務に関して注意義務を怠ったとの事実が推認できる。してみると、被告は、本件の犬の骨折につき責任を有するものと認められる。」と判示し、ペットホテル側の責任を認め、病院での治療費及び診断書料として金7万1600円、慰謝料として金3万円の合計金10万1600円の損害賠償責任を肯定しました(青梅簡易裁判所平成15年3月18日判決)。

 

したがって、ケースⅠの事例においても、Aさんが、Bに善管注意義務の違反があることを証明することができた場合には、犬の治療費等の損害についての損害賠償を請求することができます。

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