弁護士 武田雄司

中国法務の小窓(第4回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「中国の目指す社会主義国家はどんな国?―中国の国家機構~行政組織③」

中国法務の小窓(第4回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「中国の目指す社会主義国家はどんな国?―中国の国家機構~行政組織③」

弁護士 武田雄司

 

恐ろしいことに、早いもので、第3回の小窓を閉じてから「3年後」の年末ですね…

 

もはや何かいい言い訳ができる期間でもないので、しれっと再開します(業を煮やし「第4回」を開けてくれた同僚の牧野弁護士に感謝しつつ、「第4回」でいきます。)

 

前回は、中国憲法の基本原理として紹介した、①人民民主主義独裁、②社会主義国家、③民主集中制の内、②の話で終わっていましたので、今回は③民主集中制についてです。

 

1.3 ③民主集中制

 

1.3.1 民主集中制の具体的内容

 

中国憲法3条1項には「中華人民共和国の国家機構は、民主集中制の原則を実行する。」と規定されており、民主集中制原則の実行が謳われています。

民主集中制とは、民主主義的中央集権と訳されることもあるようですが、イメージとしてはこちらの方がしやすいですね。

では、民主集中制を実行すると言っても、具体的には何を実行するというのでしょうか。

この具体的内容が、中国憲法第3条2項~4項に記載されています。

 

2項:全国人民代表大会及び地方各級人民代表大会は、すべて民主的選挙によって選出され、人民に対して責任を負い、人民の監督を受けて運営されること。

⇒人民と国家権力機関との関係

 

3項:国家の行政機関、裁判機関及び検察機関は、いずれも人民代表大会によって組織され、人民代表大会に対して責任を負い、その監督を受けて運営されること。

⇒国家権力機関相互の関係

 

4項:中央と地方の国家機構の職権区分は、中央の統一的指導の下に、地方の自主性と積極性を十分に発揮させる原則に従うこと。

⇒国家権力機関内部及び中央と地方との関係

 

民主集中制の原則とは、以上の3つの観点から、国家権力機関に対して全て民主的コントロールを及ぼすという原則です。

 

1.3.2 人民と国家権力機関との関係

 

人民が国家権力機関を民主的にコントロールするために、人民による「選挙」が行われる仕組みが採用されています。

 

中国って「選挙」してるの?という率直な感覚をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、現在の選挙制度の始まりは、1980年1月1日が「全国人民代表大会及び地方各級人民代表大会選挙法」が施行されたことに遡ります。その後6回の改正を経て、2015年8月29日に公布・施行された改正法(第6次改正)が最新の選挙法になります。

 

特徴としては、直接選挙と間接選挙の併用制を採用しています(第2条)。

 

全国人民代表大会の代表並びに省、自治区、直轄市、区を設ける市及び自治州の人民代表大会の代表⇒1級下の人民代表大会がこれらを選挙=間接選挙

 

区を設けない市、市管轄区、県、自治県、郷、民族郷及び鎮の人民代表大会の代表⇒選挙民がこれを直接選挙=直接選挙

 

そして、18歳以上の公民は、民族、人種、性別、職業、出身家庭、宗教信仰、教育程度、財産状況及び居住期間を問わず、いずれも選挙権及び被選挙権を有し(第3条)、一人一票の原則(第4条)が規定されており、普通・平等選挙が行われています。

 

2010年に第5次改正がなされるまでは、各レベルの人民代表大会における農村代表については一票の価値が制度上高く設定される等、制度的に農村と都市間で実質的不平等選挙が行われるという特徴がありましたが、2010年の第5次改正によって、代表の人口比例原則が設定され(第14条、第16条)、投票価値による不平等は解消されています。

 

代表候補者の選出については、選挙区又は選挙単位ごとに指名・選出されることになっていますが、各政党及び各人民団体は、連合又は単独で代表候補者を推薦することができ、選挙民又は代表は、10人以上の連名によっても、代表候補者を推薦することができる仕組みになっています(第29条)。

 

以上のとおり、選挙制度そのものは、民意が反映される形式が整えられているものの、間接選挙を受けるために代表候補者として推薦を受ける段階で、共産党による調整がなされることは当然であって、共産党による影響を受けない人物が何らかの代表になることはおよそ考えられない選挙システムが構築されているのが現状のように思います。

 

1.3.3 国家権力機関相互の関係

 

国家の行政機関、裁判機関及び検察機関は、いずれも人民代表大会によって組織され、人民代表大会に対して責任を負い、その監督を受けて運営されると規定されているとおり、「行政」、「司法」、「検察」は、民主的コントロールのもと設置される各級の人民代表大会の内部組織として位置づけられ、人民代表大会によって監督運営される仕組みが採用されています。

 

人民代表大会という絶対的な最高権力機関を設定し、各組織を指導監督する仕組みをとっており、権力機関相互にチェック機能を付与し、バランスを保つ三権分立の考え方は全く採られておらず、当然ながら司法権の独立もありません。

 

人民代表大会という絶対的な最高権力機関に対する民主的コントロールは、選挙によって実現されていることが民主集中制のキモになるわけですが、これが本当の意味で実現されていると評価できるか否かは立場によって評価が分かれるところでしょう。

 

1.3.4 国家権力機関内部及び中央と地方との関係

 

最後に、各地方において絶対的な最高権力機関となる各地方の人民代表大会についても、中央の統一的指導の下に、地方の自主性と積極性を十分に発揮させる原則に従うことが予定されており、各地方の人民代表大会を全国人民代表大会がコントロールする仕組みが採用されています。

 

1.3.5 まとめ

 

以上が中国の国家権力の仕組みです。

 

「国民主権」を謳う日本と、「人民主権」主権を謳う中国では、主権在民という意味では同じ発想であるものの、全国人民代表大会を最高国家権力機関と位置づける国家であり、この点で日本とは全く発想が異なります。

 

そのため、理解しにくいところは多々あるのですが、「人民」による「民主主義独裁」を宣言する国だと考えると、「人民」が間接的に選出する全国人民代表大会を最高国家権力としてその他の全ての権力機関がぶら下がっているというイメージは比較的わかりやすいのではないでしょうか。

 

もちろん、第2回の小窓で見てきたように、人民=全国人民代表大会の上には、人民の指導組織である中国共産党が存在します。

 

その意味では、最高国家権力の意思決定は、実質的には、中国共産党が(具体的には中国共産党全国代表大会で決定されます。)決めるようなものであり、共産党全国代表大会は国家権力機関ではないため、不正確な表現にはなりますが、全国人民代表大会の上に、中国共産党全国代表大会が存在するというイメージが実態です。

 

次回は、人民代表大会の下部組織としてどのような組織が設置されているのかという点をみていきたいと思います。

 

以上

弁護士 武田雄司

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