弁護士玄政和

他サイトのコンテンツ記事を参考に新たなコンテンツ記事を作成することが著作権侵害にあたらないか

第1 はじめに

 

以前、Webサイト上に掲載するコンテンツ記事に関しまして、以下のようなご相談がありました。

 

「①他サイトの記事の情報を参考に自社サイトの記事を作成する。②参考にする分量については、たとえば、他サイトの記事が1,000文字あったとした場合、100文字程度である。③参考にする場合も、まったく同じ文章を自社サイトに記載するのでは、内容は似ているものの、言葉の使い方や説明の使いかは異なる。

このような場合、著作権法上の問題はないか。著作権法には、引用という形で他の著作物を利用することができる場合があると聞いたことがあるが、今回はこれにあたらないか。」

 

以下では、こちらのご相談に関して簡略にご説明したいと思います。なお、今回は、参考にする他サイトの記事が著作物に該当することは前提としてご説明いたします。

 

 

第2 ご相談の記事作成方法が著作権侵害にあたらないか

 

他者の著作物をし、自分の著作物に掲載することは、複製権(著作権法21条)や翻案権(同法27条)等の侵害にあたる可能性があります。もっとも、文章がどの程度似ていれば著作権の侵害とされるのかは、「ここを超えたらアウト」という境界線を引くことが難しい問題です。

 

関連する裁判例として、あの解散したジャニーズグループ「SMAP」に関する記事についてのものがあります(「SMAPインタビュー記事事件」(東京地判平成10年10月29日))。この事件は、「SMAP大研究」という書籍を発行した被告に対して、SMAPのインタビュー記事を掲載した雑誌を出版していた出版社とSMAPのメンバーが原告となって、著作権侵害による差止めと損害賠償などを求めた事件です。裁判所の判断には、著作権侵害と認定したものと著作権侵害にはならないとしたものがあります(なお、裁判所は、SMAPメンバー個人の請求については、SMAPメンバー個人は、インタビューの素材を提供したにすぎず著作者ではないとして請求を棄却しています)。以下、著作権侵害と判断された部分と判断されなかった部分を引用します(「SMAPインタビュー記事事件」(東京地判平成10年10月29日)別紙)

 

-著作権侵害と判断された部分

・原告の記事

  ただただ友達と遊んで毎日を過ごして、やりたいことや将来のことなんて考えたくなかった。夢とか希望も特になくてさ。だから中2のとき、友達と一緒にジャニーズ事務所に履歴書送ったときも、ゼッタイスターになりたいって思って応募したわけじゃないんだよね。「芸能人に会えるし、タダで海外に行けるし、大磯ロングビーチにも入れるぜ」みたいな(笑)、

 

・被告の書籍

  クラスの連中が勉強、進学、将来のことを考え始めている次期にさしかかっていたが、彼はやりたいことや将来のことなど全く頭になかった。夢や希望も特に持っているというわけではなく、何となく見た雑誌に載っていたジャニーズのオーディションに友達と冗談半分で履歴書を送ったのも本当に軽い気持ちだった。「芸能人にも会えるし、タダで海外にも行けるし、大磯ロングビーチにも行けるかもしれないぜ」と、素人なら誰でも純粋に思うことが理由であり、”絶対スターになりたい!”という気持ちはサラサラなかったようだ。

 

-著作権侵害と判断されなかった部分

・原告の記事

  友達で結婚したヤツもいたしね。実は僕も、その頃は十八で結婚するのが夢だったの(笑)。

 

・被告の書籍

  学生時代の仲間の中には結婚している人もいたため、メンバー中いちばん結婚願望が強いという彼は、実は十八歳で結婚する予定だった。

 

判断としては難しいですが、誰かの発言をそのまま引用したり、特徴的な表現をそのまま用いたりした場合は、類似性を指摘されやすく、著作権侵害と認められやすいのではないかと考えられます。他方、第三者のコンテンツを参考にしたとしても、元のコンテンツと同じ事実関係を使用しているだけであり、主張や構成が異なっていて作成者の個性が表現されている場合は元のコンテンツとは別の著作物となり、著作権侵害にはならないと考えられます(事実関係そのものは、著作物ではないため)。

他に注意すべき点としては、「比喩表現」が用いられている元の記事がある場合は、その表現がうまい表現であれば、つい使いたくなるところですが、作成者の個性が現れがちな比喩表現をそのまま使うことは、著作権侵害になる可能性が高くなってしまうといえます。裁判例でも、大地の子事件(東京地判平成13年3月26日)と言われる事件では、ノンフィクション作品の「主がいなくなり、まるで魂を失ったような空き家には、日本名の名札だけがポツンと取り残されていた」という表現について、「比喩が用いられている点などにおいて創作性を認めることができる」として著作物性を認めています。

 

 

第3 引用にあたらないか

 

今回の記事作成方法が、著作権法上の「引用」として許容されないかについて、結論としては、「引用」には当たらず、「引用」としては許容されないものと考えます。著作権法32条1項では、以下の通り規定されています。

 

「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」

 

判例では、上記著作権法上の「引用」にあたるための要件として、ⅰ 「明瞭区別性」(引用部分が他の部分と明瞭に区別されていること)、ⅱ 「主従関係」(自分の文章が「主」、引用部分は「従」であること)を満たすことが必要であるとされています(パロディ・モンタージュ写真事件(最判昭和55年3月28日))。

(ⅰ・ⅱの要件が条文上明記されているわけではないため、裁判例は、あくまで条文上の「公正な慣行に合致するもの」、「引用の目的上正当な範囲内で行われるもの」という要件の中で、ⅰ・ⅱの要素を考慮しているだけであって、必須の要件というわけではないという見解もあります。また、上記判例が、引用されている側の著作者人格権を侵害しないことも要件として挙げているという見解もありますが、様々な異論があるところであり、今回はⅰ・ⅱを主として検討いたします。これらについて、今回は詳細なご紹介は割愛しますが、別の記事で改めてご紹介できればと思います)

 

ⅰ「明瞭区別性」を満たすためには、カギカッコや斜体を用いるなどして、どこからどこまでが引用か区別されている必要があります。

ⅱ「主従関係」については、引用があくまでも補足的情報で、主となる内容は自分のオリジナルの文章であることが求められるとされています。どちらが主であるかは量と質の両面から判断されるとされています。

 

以上のに加え、出典の明示(著作権法48条)が必要であることも、「引用」の趣旨から導き出され、裁判例でも、出典の明示が条文上の「公正な慣行」として考慮されるとしたものがあります(東京地判平成31年4月10日)。

 

本件では、他サイトの記事が1,000文字あったとした場合、その中の1段落(100文字程度)を参考にして、まったく同じ文章を自社サイトに記載するのでは、内容は似ているものの、言葉の使い方や説明の使い方を変えてコンテンツを作成するとされているため、上記の区別性や主従関係の要件、著作者人格権を侵害しない、出典の明示といった点を満たさないと考えられ、「引用」の要件には当てはまらず、著作権法32条1項の規定を根拠としては、他サイトの記事を利用することはできないこととなります。

 

第4 終わりに

 

以上より、他サイトの記事を参考にして記事作成を行うことは、著作権侵害の可能性があり、著作権法上の「引用」にも当たらないと考えられることから、

・比喩表現など、作成者の独自の個性が現れていると考えられる表現や文体

・元記事作成者独自の取材により収集したであろう情報等で、他の複数のメディアでは紹介されていないもの

などについては、掲載を控えるか、個性的な表現を削除する形で掲載する(事実関係のみを拾っていく形にする)等の方法で対応することが望ましいといえます。

 

 

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