商標権のハナシ③(商標権の侵害ってどんなとき?)
前回までのコラムで、商標権の権利の内容とその範囲をご説明しました。
今回は、商標権を侵害する場合はどんな場合かについてご説明いたします。
1 商標権の「使用」
商標権というのは、登録商標を他人に「使用」されない権利になります。
そのため、誰かの持っている登録商標を他人が「使用」した場合に、商標権侵害になります。
ここでいう「使用」とは、商標法2条3項各号に規定があります。
よく問題になるのは、
・商品又は商品の包装に標章を付する行為(1号)
・商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為(2号)
・役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為(3号)
・商品若しくは役務に関する広告、価格表に標章を付して展示し、頒布し
又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(7号)
になります。(※分かりやすくするために一部条文の文言を省略しています。)
そのため、商標権をもっている人の許可を受けずに、このような「使用」をしてしまうと商標権侵害となります。
2 商標的使用に当たらない場合の「使用」
しかし、形式的に登録商標を「使用」していても、商標権の侵害にならない場合もあります。
商標法26条1項各号が例外的に商標権の効力が及ばない場合定めています。
この中でも、よく問題になるのは、同項6号の商標的使用に当たらない場合と言えるかどうかです。
6号は、「需要者が何人かの業務にかかる商品または役務であることを人認識することができる態様により使用されていない」場合には、商標権侵害にならないとしています。
これは、商標の機能が出所表示と商品の特定機能にあることから、出所を誤認しない場合や、商品の特定に混同を生じない場合には、商標権の侵害にならないとして定められたものです。
3 商標的使用にあたらないとした判例
東京地裁平成10年7月22日判決は、
「オールウェイ」という登録商標をもった権利者が、コカ・コーラ社がキャッチコピーに使用した「オールウェイズCoca-Cola」という表示を商標権侵害として主張しましたが、商品特定機能ないし出所を表示する機能を果たす態様で用いられているものと言えないとして商標権侵害を否定しています。
また、東京地裁平成22年11月25日判決では、
「塾なのに家庭教師!!」という登録商標をもった権利者が、「塾なのに家庭教師」という広告をしたことについて商標権侵害を主張しましたが、これも同様の理由で商標権侵害を否定しています。
以上のように、登録商標であっても、その登録商標が「オールウェイ」といったように様々な場面で使うことができる場合にすべてを商標権侵害としてしまうと、不都合が起きてしまうため、商標法は例外として商標的使用に当たらない場合には登録商標の「使用」を認めています。
仮に、この規定がない場合には、いざ商標を登録しようとしても、その審査が厳しくなってしまうおそれがあるので、この規定があることによって、商標として登録できる範囲も広がっているとも言えそうですね。