弁護士 林村涼

折り図と著作権

私は、先日、とある展示会を訪れたのですが、そこには、紙で作られたとは思えない立体的な作品(例えば、少し離れた位置から見ると壺に見えるものや、お皿に見えるもの等)が展示されていました。

作品の中には、折り図(折り紙を折る際に、目標とする完成形に至るまでの折り方や手順などの過程を記した折り紙の設計図)(以下「本件折り図」といいます。)が作品の横に記載されているものがありました。

さて、本件折り図は著作物に該当するのでしょうか。

 

前提として、本件折り図に著作物性が認められるためには、当該折り図が、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1項第1号)に該当する必要があります。

折り図の著作物性および複製権侵害・翻案権侵害が争われた裁判例が問題になったのが、へんしんふきごま事件と呼ばれる事案です(東京地判平成23年5月20日(第一審))。

【事案の概要】

折り紙作家であるXが、テレビドラマ番組ホームページに「吹きゴマ」の折り図が掲載したYに対し、当該折り図は、Xの著書記載の「へんしんふきごま」の折り図を複製または翻案したものであり、著作権侵害に当たる旨主張したものです。

【裁判所の判断】

「折り紙作品の折り図は、当該折り紙作品の折り方を示した図面であるが、その作図自体に作成者の思想又は感情が創作的に表現されている場合には、当該折り図は、著作物に該当するものと解される。

もっとも、折り方そのものは、紙に折り筋を付けるなどして、その折り筋や折り手順に従って折っていく定型的なものであり、紙の形、折り筋を付ける箇所、折り筋に従って折る方向、折り手順は所与のものであること、折り図は、折り方を正確に分かりやすく伝達することを目的とするものであること、折り筋の表現方法としては、点線又は実線を用いて表現するのが一般的であることなどからすれば、その作図における表現の幅は、必ずしも大きいものとはいい難い。また、折り図の著作物性を決するのは、あくまで作図における創作的表現の有無であり、折り図の対象とする折り紙作品自体の著作物性如何によって直接影響を受けるものではない。

「本件折り図を全体としてみた場合、上記説明図の選択・配置、矢印、点線等と説明文及び写真の組合せ等によって、「へんしんふきごま」の一連の折り工程(折り方)を見やすく、分かりやすく表現したものとして創作性を認めることができるから、本件折り図は、著作物に当たるものと認められる。」

 

 

私が訪れた上記展示会にあった折り紙作品自体は、紙で造られたとは思えない立体感を有しており創作性が認められますので著作物に該当します。しかしながら、上記裁判例が示しているとおり、折り紙作品自体が著作物であることをもって、折り図も著作物であるということにはならず、当該折り図の著作物性を判断する際には、折り図そのものの表現に基づいて判断しなければなりません。

そして、本件折り図は、点線と実線を用いて表現されていましたが、へんしんふきごま事件における折り図のように、写真や解説等の工夫がなされていませんでしたので、作成者の思想又は感情が創作的に表現されたものとは言えず、著作物には該当しないと判断される可能性が高いと言えます。

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