弁護士 林村涼

職務著作

突然ですが、会社の従業員が業務上作成した著作物(ex.報告書)はいったい誰が著作権者なのでしょうか。著作権法上、著作物の創作者が著作者であり、著作者が著作権を有する者、すなわち「著作権者」です(著作権法第17条第1項参照)ので、当該著作物の作成者が著作権者ということになりそうです。

 

しかしながら、原則があれば例外もあるのが法律でして、以下の要件を満たすと「職務著作」となり、当該作成者ではなく使用者が著作者となり、その結果、著作権および著作者人格権は当該法人等に帰属することとなります(著作権法第17条第1項、同法第15条第1項)。

 

①法人等の発意に基づき、

②その法人等の業務に従事する者が

③職務上作成するものであること

④法人等が自己の著作の名義の下に公表するものであること

⑤作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと

 

したがって、従業員が業務上作成した著作物は、原則これらの要件を満たし、その結果、法人等がその著作権者となります。

 

それでは、作成者が当該法人等と雇用関係にない外部の人の場合、結論は変わるのでしょうか。この問いの検討に際しては、「法人等の業務に従事する者」の解釈が問題になりますが、この点について、最高裁判所は、RGBアドベンチャー事件において次のように判示しています(最高裁判所平成15年4月11日)。

 

「法人の規定により法人等が著作者とされるためには、著作物を作成した者が『法人等の業務に従事する者』であることを要する。そして、法人等と雇用関係にある者がこれに当たることは明らかであるが、雇用関係の存否が争われた場合には、同項の『法人等の業務に従事する者』に当たるか否かは、法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに、①法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、②法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを、業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して、判断すべきものと解するのが相当である。」(番号は筆者が付記。)

 

上記裁判例が、法人等と雇用関係にない者が「法人等の業務に従事する者」に該当する否かを判断する基準を示したものと理解してよいかは疑問の余地がありますが、上記最高裁判例以後の下級審裁判例は、上記①及び②に照らし、「法人等の業務に従事する者」に該当するか否かを判断しています。例えば、両当事者間に雇用関係が存在しないことにつき争いがない事案において、東京地裁平成17年3月15日判時1894号110頁は、本件作品の内容の決定、撮影、編集等は、すべて作成者によって行われ、法人等は製作に全く関与していなかったこと、作成者は、本件作品を法人等に相談なく、テレビ局と交渉して放送に至ったことからすると、作成者と法人等は、映画製作会社とレコード会社の対等な契約関係を前提として、本件作品の撮影を行ったものであると認められることを理由に、作成者が、法人等の「業務に従事する者」には該当しない旨認定しました。

 

これらの裁判例から、作成者が法人等と雇用関係にないことに争いがないような事案においては、基本的には当該作成者が作成した著作物について職務著作は成立しないと言えます。

 

その一方で、作成者が法人等と雇用関係にあるか否かについて争いがある場合は、両当事者の関係性によっては、職務著作が成立し、当該法人等が作成物の著作権者と認められるということもあり得るため、法人等の外部の方で、契約締結前から、契約に基づき著作物を作成することが明らかな方は、職務著作成立の有無に関する紛争が起きないようにするためにも予め法人等の間で著作権の帰属関係等について取り決め(⑤の要件を充足しないようにする取り決め)をしておくべきと思われます。

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