弁護士 森下裕

著作権のハナシ②(自炊)

「自炊」と聞いて、著作権を思い浮かべる人はまだまだ少ないと思いますが、iPadやKindleなどのデバイスが普及して「自炊」という言葉は、自分の持っている本や雑誌をスキャンしてデバイスに保存するという意味でも一般的に使われるようになりました。

 

今日はそんな「自炊」と著作権についてお話したいと思います。

 

本来ならば、本や雑誌をスキャンして電子ファイル化することは著作権を侵害するもの(著作権法21条)として、著作権者は当該行為を禁止することができますし不法行為として損害賠償を請求することもできるはずです。

しかし、著作権法30条1項は私的使用のための複製を例外的に認めており、「自炊」をして、自ら利用する場合に限っては私的使用のための複製として著作権の侵害とならないとされています。

 

しかし、この自炊は自分でするには、本を裁断しなければなりませんし、スキャナーも必要で手間のかかる作業になります。歪みもなくきれいにスキャンしたいと「自炊」には凝りたいと思う方も多いはずです。そんなニーズに答えるために、自炊代行業というサービスが誕生しました。

 

利用者が自炊代行業者に依頼して、最終的には利用者がデータを取得するのだから私的利用のための複製に当たると思う方もいるかもしれません。

 

しかし、知財高裁平成26年10月22日判決は、自炊業者の自炊代行について以下のように判断しています。(被告である自炊代行業者をYとします)

 

「本サービスは、」「①利用者がYに書籍の電子ファイル化を申し込む、②利用者は、Yに書籍を送付する、③Yは、書籍をスキャンしやすいように裁断する、④Yは、裁断した書籍をYが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する、⑤完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過をたどるものであるが、このうち上記④の、裁断した書籍をスキャナーで読み込み電子ファイル化する行為が、本件サービスにおいて著作物である書籍について有形的再製をする行為、すなわち『複製』行為に当たることは明らかであって、この行為は、本件サービスを運営するYのみが専ら業務として行っており、利用者は同行為には全く関与していない。」

「Yは、営利を目的として、顧客である不特定多数の利用者に複製物である電子ファイルを納品・提供するために複製を行っているのであるから、『個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする』ということはできず、」「また、Yは複製行為の主体であるのに対し、複製された電子ファイルを私的使用する者は利用者であることから、『その使用する者が複製する』ということはでき」ない。

 

以上のように裁判所は、自炊代行業者が自炊代行をした場合について、私的利用目的の複製には当たらない判断しましたが、本件は、Yが事業者として設備を整えた上で自炊代行業を営み、インターネット広告を使って顧客を誘引したことなどが考慮されていますので、全ての自炊代行に当てはまるかどうかは、別途検討が必要です。

でも、少なくとも食材だけレストランに持っていって料理してもらっても「自炊」とは言えませんよね。

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