弁護士玄政和

韓国の著作権法を読む(2)~「著作物」の定義(第2条等)

1 はじめに

 

今年の7月から始めた「韓国の著作権法を読む」シリーズ、なんとか今月も記事を追加できそうです…。文字通り、細かい解説には踏み込まず、シンプルに条文を読んでみるシリーズです。「へえ~、韓国の法律ってこうなってるんだ」という感じでライトに読んでいただければと。今回は「著作物」の定義に関する条文を読んでみます。

 

2 韓国著作権法における「著作物」の定義

 

それでは、さっそく、「著作物」に関する定義を見てみましょう。第2条第1号です。

 

제2조(정의) 이 법에서 사용하는 용어의 뜻은 다음과 같다.

1. “저작물”은 인간의 사상 또는 감정을 표현한 창작물을 말한다.
第2条(定義)この法で使用する用語の意味は以下の通りである。
1.”著作物”は、人間の思想又は感情を表現した創作物をいう。

 

これに対し、日本の著作権法における「著作物」の定義は以下の通りです。

 

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

 

比較してみると、

①「思想又は感情」を「表現した」という点については同様の文言が用いられています。
②また、日本の著作権法における「創作的に」という点については、「創作物をいう」という点で同様の意味合いが込められているといえそうです。
この点について、判例を検索(※1)してみると、最近の大法院の判例(2021年6月30日)(※2)では、「著作物」に該当するための要件として「創作性」を要求していると判示しています。そして、「創作性」の具体的な内容として、「完全な意味の独創性を要求するものではないといえども、創作性が認定されるためには、少なくとも、当該作品が単純に他者の物を模倣したものであってはならず、思想や感情に対する創作者自身の独自的な表現を含んでいなければならない。誰が行っても同じであったり、似ざるをえない表現、即ち作成者の創造的個性が現れない表現を含むものは創作物とはいえない。」と判示しています。
詳細を検討できているわけではありませんが、日本の著作権法における「創作性」と概ね同様の考え方が取られているのではないかと思われます。
③他方、日本の著作権法における「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」という文言は存在しませんが、大法院の判決(1979年12月28日)(※3)において、「著作物」とは、「表現の方法又は形式の如何を問わず、学問と芸術に関する一切の物であり、人の精神的努力によって得られた思想又は感情に関する創作的表現物」であるとされています。
また、韓国の著作権法第4条においては、日本の著作権法第10条第1項に定めるのと概ね同様の例示がなされています。

 
제4조(저작물의 예시 등)
①이 법에서 말하는 저작물을 예시하면 다음과 같다.
1. 소설ㆍ시ㆍ논문ㆍ강연ㆍ연설ㆍ각본 그 밖의 어문저작물
2. 음악저작물
3. 연극 및 무용ㆍ무언극 그 밖의 연극저작물
4. 회화ㆍ서예ㆍ조각ㆍ판화ㆍ공예ㆍ응용미술저작물 그 밖의 미술저작물
5. 건축물ㆍ건축을 위한 모형 및 설계도서 그 밖의 건축저작물
6. 사진저작물(이와 유사한 방법으로 제작된 것을 포함한다)
7. 영상저작물
8. 지도ㆍ도표ㆍ설계도ㆍ약도ㆍ모형 그 밖의 도형저작물
9. 컴퓨터프로그램저작물

 

第4条(著作物の例示等)
①この法にいう著作物を例示すると、以下の通りである。
1.小説・詩・論文・講演・演説・脚本その他の語文著作物
2.音楽著作物
3.演劇及び舞踊・無言劇その他の演劇著作物
4.絵画・書芸・彫刻・版画・工芸・応用美術著作物その他の美術著作物
5.建築物・建築のための模型及び設計図書その他の建築著作物
6.写真著作物(これと類似する方法で制作されたものを含む)
7.映像著作物
8.地図・図表・設計図・略図・模型その他の図形著作物
9.コンピュータープログラム著作物

 

※日本の著作権法第10条第1項
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物

 
以上のことからすれば、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」との文言が存在しないからといって、韓国と日本の著作権法における「著作物」の定義について、大きな差異が生ずるものではないと考えられます。※4


3 おわりに

今回の記事は以上です。次回のテーマについては検討中ですが、引き続き毎月1つのペースで、気合いが入りすぎない内容でゆるく続けられればいいなと思っています。

 
※1 韓国では、法制処(日本でいう内閣法制局)の条文検索システム(国家法令情報センター)の使い勝手がかなりよく、条文のとなりにあるボタンを押すと、当該条文に関連する判例が一覧できる形となっています(たとええば、著作権法)。
※2 대법원 2021. 6. 30., 선고, 2019다268061
※3 대법원 1979. 12. 28., 선고, 79도1482
※4 ただし、韓国の著作権法では、日本の著作権法と異なり、「応用美術著作物」が著作物の例示に含まれています。日本では、応用美術の著作物性を巡って多くの裁判例があり、種々の議論がなされているところであり、韓国において、応用美術に関する著作物性がどのように考えられているかについては、別途調査してみたいと思います。

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