弁護士玄政和

韓国の著作権法を読む(5)~第4条(著作物の例示等)

第1 はじめに

 

韓国の著作権法をタイトルどおりシンプルに読んでいく取り組み、5回目となりました。今回は第4条の著作物の例示等に関して、読んでみたいと思います。

 

第2 韓国著作権法第4条

 

제4조(저작물의 예시 등) ①이 법에서 말하는 저작물을 예시하면 다음과 같다.
1. 소설ㆍ시ㆍ논문ㆍ강연ㆍ연설ㆍ각본 그 밖의 어문저작물
2. 음악저작물
3. 연극 및 무용ㆍ무언극 그 밖의 연극저작물
4. 회화ㆍ서예ㆍ조각ㆍ판화ㆍ공예ㆍ응용미술저작물 그 밖의 미술저작물
5. 건축물ㆍ건축을 위한 모형 및 설계도서 그 밖의 건축저작물
6. 사진저작물(이와 유사한 방법으로 제작된 것을 포함한다)
7. 영상저작물
8. 지도ㆍ도표ㆍ설계도ㆍ약도ㆍ모형 그 밖의 도형저작물
9. 컴퓨터프로그램저작물
② 삭제 <2009. 4. 22.>

 

第4条(著作物の例示等)
①この法律でいう著作物を例示すると、次の通りである。
1. 小説・詩・論文・講演・演説・脚本その他の語文著作物
2. 音楽著作物
3. 演劇及び舞踊・無言劇その他の演劇著作物
4. 絵画・書道・彫刻・版画・工芸・応用美術著作物その他の美術著作物
5. 建築物・建築のための模型及び設計図書その他の建築著作物
6. 写真著作物(これと類似の方法で製作されたものを含む)
7. 映像著作物
8. 地図・図表・設計図・略図・模型 その他の図形著作物
9. コンピュータプログラム著作物
②削除<2009.4.22.>

 

日本の著作権法第10条にも、同様に著作物を例示する以下の規定がありますね。

 

(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。
3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。

 

見比べてみると、例示されているのはいずれも9種類で、その中身もかなり似通っていることがわかります。一点気になったのは、韓国著作権法第4条4号で、「応用美術著作物」が著作物として例示されているという点です。日本では、応用美術(実用に供する物品に応用される美的な表現物)に関して、著作物として保護すべきか否かについて、純粋美術同視説(※1)と創作的表現説(※2)の対立があるところ(島並良・上野達弘・横山久芳「著作権法入門(第3版)」41~47p(有斐閣、2021年)等をご参照ください)、韓国著作権法において、あえて「応用美術著作物」が著作物として例示されているという点を踏まえ、韓国において応用美術の著作物性についてどのように考えられているかが気になりました。

 

※1 応用美術が著作物として保護されるためには、表現に創作性が認められるだけでは足りず、純粋美術と同視しうる程度の美的鑑賞性を備えていることが必要であるとする見解。
※2 応用美術についても、一般の著作物と異なる特別な保護要件を課すことなく、表現に創作性が認められれば、著作物として保護すべきであるとする見解。

 

調べてみたところ、「応用美術著作物」について、韓国著作権法第2条第15号に、以下のような定義がありました。

“응용미술저작물”은 물품에 동일한 형상으로 복제될 수 있는 미술저작물로서 그 이용된 물품과 구분되어 독자성을 인정할 수 있는 것을 말하며, 디자인 등을 포함한다.

「応用美術著作物」とは、物品に同一の形状で複製することができる美術著作物として、その利用された物品と区別され、独自性を認められるものをいい、デザイン等を含む。

 

そして、大法院の判例は、当該応用美術著作物について、著作権法の保護を受けるためには、
①産業的目的での利用のための「複製可能性」
②当該物品の実用的・機能的要素からの「分離可能性」
という要件を満たさなければならないと判示しています(대법원 2013. 4. 25. 선고 2012다41410 판결、대법원 2004. 7. 22. 선고 2003도7572판결)。

 

대법원 2013. 4. 25. 선고 2012다41410 판결では、原審の判決文が見当たらなかったため詳細は明らかではありませんが、ある書籍の初版4種の表紙・諸号デザインの応用美術著作物該当性が問題となった事案であり、判示では、当該デザインについて、「いずれも、本件初版4種の書籍の内容が存在することを前提としてこれを効果的に伝達するための手段に過ぎず、書籍表紙という実用的な機能と分離認識されて独立して存在できず、その文字、絵の形や配列などの形式的要素自体だけでは、一つの美術著作物といえるほどの独自の実体が認められないため、上記表紙・題号デザインが著作権法の保護対象となる応用美術著作物ではない」との原審の判断が是認されています。

 

このような、「分離可能性」と要件とする考え方は、日本における前記の純粋美術同視説の考え方に近いものといえます。裁判例では、いわゆるファッションショー事件控訴審判決(知財高判平成26年8月28日)のほか、最近では、知財高判令和3年6月29日などにおいて、応用美術が著作物として保護されるか否かについて、物品の実用的・機能的な側面を離れて、その表現が独立して美的鑑賞の対象となるものかどうかを問題にしており、前述の韓国における考え方と比較的近いものと思われます。

 

*知財高判令和3年6月29日
本件商品のような実用に供される工業製品であっても,「実用的な機能と分離して把握することができる,美術鑑賞の対象となる美的特性」を備えていると認められる場合には,著作権法2条1項1号の「美術」の著作物として,著作物性を有するものと解される。しかし,そのような美的特性を備えていると認められない場合には,著作物性を有することはないものと解される。以上の点は,著作権法に明文の規定があるものではないが,実用に供される工業製品は,意匠法によって保護されるものであり,意匠法と著作権法との保護の要件,期間,態様等の違いを考えると,「実用的な機能と分離して把握することができる,美術鑑賞の対象となる美的特性」を備えていると認められる場合はともかく,そうでない場合は,著作権法ではなく,もっぱら意匠法の規律に服すると解することが,我が国の知的財産る美的特性」を備えていると認められる場合はともかく,そうでない場合は,著作権法ではなく,もっぱら意匠法の規律に服すると解することが,我が国の知的財産
法全体の法体系に照らし相当であると解されるからである。

 

第3 終わりに

今回の記事は以上となります。毎回、あまり深いところまで踏み込む余裕がなく、浅い記事になってしまい恐縮ですが、継続することが大事だと思いますので、なんとか毎月時間を作っていきたいと思います。

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