弁護士 武田雄司

中国法務の小窓(第8回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「中国法の体系」

中国法務の小窓(第8回)~中国ビジネスをあなたの手の中に~「中国法の体系」

 弁護士 武田雄司

 

1.はじめに

 

中国は、2001年12月11日のWTO加盟に先立ち、法体系を整備するため「立法法」を制定し(2000年3月15日国家主席令第31号により公布、同年7月1日施行)、法源の体系を整えています(なお、立法法は、2015年3月15日中華人民共和国主席令第20号により改正法が公布され、同日施行されています。)。

 

今回のコラムでは、この中国法の体系を見ていきたいと思います。

 

2.中国法の体系

 

「立法法」においては、中国法は、次のとおり分類されることになっています。

 

・憲法

・法律

・行政法規

・地方性法規

・自治条例

・単行条例

・行政規則

 

これらの法源が、憲法を頂点とするヒエラルヒーを構成しており、相互に矛盾する場合の優劣関係等について規定されています。

 

3.法律

 

全国人民代表大会及び全国人民代表大会常務委員会のみが、国の立法権を行使することができ、法律を定めることができます(立法法7条)。

 

以下の事項については法律のみでしか規定することができません(立法法8条)。

(1) 国家主権に係る事項

(2) 各級人民代表大会、人民政府、人民法院及び人民検察院の形成、組織及び職権

(3) 民族区域自治制度、特別行政区制度及び基層大衆自治制度

(4) 犯罪及び刑罰

(5) 公民の政治的権利の剥奪及び人身の自由の制限に対する強制措置及び処罰

(6) 税目の設定、税率の確定及び租税徴収管理等の租税基本制度

(7) 非国有財産に対する収用及び強制使用

(8) 民事基本制度

(9) 基本経済制度並びに財政、税関、金融及び対外貿易の基本制度

(10) 訴訟及び仲裁制度

(11) 全国人民代表大会及びその常務委員会が必ず法律を制定するべきその他の事項

 

すなわち、法律とは、全国人民代表大会及び全国人民代表大会常務委員会が、上記事項について定める法源となります。

 

また法律の解釈権は、全国人民代表大会常務委員会に属し(立法法45条)、全国人民代表大会常務委員会の法律解釈は、法律と同等の効力を有するとされています(立法法50条)。

 

法律の中には、「試行」や「暫行」と名称がついたものがありますが、効力の面では通常の法律と何ら変わるところはありません。

 

4.行政法規

 

行政法規とは、国務院が憲法及び法律に基づき制定する法源です(立法法65条)。

 

行政法規は、次に掲げる事項について定められます(立法法65条)。

(1)法律の規定を執行するため行政法規を制定する必要のある事項

(2)憲法第89条所定の国務院の行政管理職権に係る事項

 

行政法規は、法律に基づき制定される法源であり、法律と抵触する場合には、法律が優先されることになります(立法法88条1項)。

 

■憲法>法律>行政法規

 

5.地方性法規

 

地方性法規とは、省、自治区及び直轄市の人民代表大会及びその常務委員会が、当該行政区域の具体的状況及び実際の必要に基づき、憲法、法律及び行政法規と抵触しないことを前提として定める法源です(立法法72条)。

 

地方性法規は、次に掲げる事項について定められます(立法法73条)。

(1)法律又は行政法規の規定を執行するため、当該行政区域の実際の状況に応じて具体的規定をする必要のある事項

(2)地方性事務に属し地方性法規を制定する必要のある事項

 

地方性法規は、憲法、法律及び行政法規と抵触しないことを前提として制定される法源であり、行政法規と抵触する場合には、行政法規が優先されることになります(立法法88条2項)。

 

■憲法>法律>行政法規>地方性法規

 

6.自治条例及び単行条例

 

自治条例及び単行条例とは、当該地の民族の政治、経済及び文化の特徴に基づき民族自治地方の人民代表大会が定める法源です(立法法75条)。

 

制定に際しては、自治区の自治条例及び単行条例については、全国人民代表大会常務委員会に報告して承認を、自治州及び自治県の自治条例及び単行条例については、省、自治区又は直轄市の人民代表大会常務委員会に報告して承認を受けなければ効力が生じないものの、自治条例及び単行条例については、当該地の民族の特徴により法律及び行政法規の規定について柔軟な規定をすることができるとされています(ただし、法律又は行政法規の基本原則に違背してはならず、かつ、憲法及び民族区域自治法の規定その他の関係する法律及び行政法規がもっぱら民族自治地方についてなした規定に対し柔軟な規定をしてはならないとされています。)。

 

従って、特定の条件下においては、次のような序列となります(立法法90条1項)。

 

■憲法>(※自治条例及び単行条例が法により法律、行政法規又は地方性法規について柔軟な規定をする場合、当該自治地方においては)自治条例及び単行条例>法律、行政法規又は地方性法規

 

7.規則

 

規則は、制定主体によって大きく2種類に分けられます。

 

① 国務院の各部、委員会、中国人民銀行及び会計検査署並びに行政管理職能を有する直属機構が、法律並びに国務院の行政法規、決定及び命令に基づき、当該部門の権限範囲内において定める規則(いわゆる部門規則)

 

② 省、自治区、直轄市及び区を設ける市及び自治州の人民政府が、法律、行政法規及び当該省、自治区又は直轄市の地方性法規に基づき定める規則(いわゆる地方政府規則)

 

優先順位については、①、②でそれぞれ別のルールが設定されており、次のとおりとされています。

 

※「地方政府規則」の場合

■憲法>法律>行政法規>地方性法規>地方政府規則

 

※「部門規則」の場合

■憲法>法律>行政法規>地方性法規=部門規則

 

地方性法規と部門規則との間において同一の事項に対する規定が一致せず、どのように適用するのかを確定することができない場合には、国務院が意見を提出するとされており、明確に序列は定められていません。

国務院は、地方性法規を適用するべきと認めるときは、当該地方において地方性法規の規定を適用する旨を決定しなければならず、部門規則を適用するべきと認めるときは、全国人民代表大会常務委員会に裁決を要請しなければならないとされています(立法法95条)。

 

※「部門規則間」又は「部門規則と地方政府規則間」の序列

同一の事項に対する規定が一致しない場合には、国務院が裁決するとされており、明確に序列は定められておりません。

 

8.その他(司法解釈)

 

最高人民法院及び最高人民検察院は、裁判及び検察業務における具体的な法律適用に属する解釈を作成することができるとされていますが、当該解釈は、主に具体的な法律条文に焦点を当て、かつ、立法の目的、原則及び原意に適合しなければならないとされています(立法法104条)。

 

①法律の規定について具体的意義をより一層明確にする必要のあるときや、②法律が制定された後に新たな状況が発生し法律適用の根拠を明確にする必要のあるときが生じた場合には、全国人民代表大会常務委員会に対し法律解釈の要求を提出し、又は関係する法律の制定若しくは改正に係る議案を提出しなければならないとされ、独自の解釈を公布することを避けるよう規定されています。

 

また、最高人民法院及び最高人民検察院以外の裁判機関及び検察機関は、具体的な法律適用に係る解釈を作成してはならないと規定されており、それぞれ、最高人民法院及び最高人民検察院に解釈権が統一されています。

 

(とはいえ、「労働紛争に係る若干の問題に関する上海市高級人民法院の解答[上海高級人民法院民一庭調研指導[2010]34号]」や、「財産保全業務に関する上海市高級人民法院の若干の規定(試行)[上海市高級人民法院  滬高法[2002]381号]」といった、上海市高級人民法院から解釈が発布されており、これが事実上単に発布されているだけであるのか否か、法的な位置づけは不明であるものの、実際上は、厳密な意味で、裁判所の解釈権の統一は容易ではないようです。)

 

以上

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