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物損事故に関する警察の事故処理ルールと事故発生時の当事者の対応について

物損事故に関する警察の事故処理ルールと事故発生時の当事者の対応について

■ポイント


1.物損事故では、次の要件を充たす場合には、実況見分は行われず、実況見分調書も作成されない。

① 警察官による交通流の回復等緊急の措置を講ずる必要がない場合

② 当事者が現場見分を希望せず、車両と共に来署(所・隊)することが可能な場合

⇒処理要領上は、何が何でも実況見分を行わないということではないため、状況として、事故原因に争いが発生しそうな場合には、物損事故であって臨場する警察官に実況見分の実施を強く申し入れて、実施をしていただくことも検討する。

 

2.現場見分を省略した物件事故については、当事者の不安解消等のため、メモを交付することとされているため、メモの交付を受け、必要事項を記入しておく。

 

第1 はじめに


交通事故の結果、人の死傷が発生した場合(=人身事故)には、その被害の程度に応じて、事故処理の手続に差異が設けられています(2015年5月10日付け「実況見分調書はどのように作成されるのか―実況見分に臨む際の注意点」の記載参照)。

 

しかし、物の損壊のみが発生した場合(=物損事故〔警察関係書類では、「物件事故」と表記されます。〕)については、その発生件数が膨大であることも一つの理由として、その処理はより簡略化されています。

 

第2 物損事故の処理要領

 

物損事故の処理については、平成4年2月14日付け警察庁交通局交通指導課通達「物件事故処理要領について」(丁交指発第27号等)が発布されており、具体的には次のとおり定められています(なお、警察庁HPの関連するページでは概略しか公表されていませんが、当該通達を受けて、各県警が各部等へ発布した通達の内、石川県警察本部長が発布主体の通達がインターネットで公表されており、以下の内容は、当該石川県の通達に基づき記載しています。)

 

1.物件事故処理要領

※なお、ここでいう物件事故には、建造物の損壊は除外されています。

 

1.1 認知時の措置

 

110番又は警察署等への通報により物件事故を認知した場合、当該事故が次の要件をともに充足するときは、原則として現場見分(=現場に臨場し、実況見分等を行うことをいう。)

を省略するものとする。

 

① 警察官による交通流の回復等緊急の措置を講ずる必要がない場合

② 当事者が現場見分を希望せず、車両と共に来署(所・隊)することが可能な場合

 

⇒すなわち、①及び②の要件を共に充たす場合には、実況見分そのものを省略し、その結果実況見分調書は作成されないこととなります。

 

1.2 受理警察官の措置

 

前記(1.1)により、事故当事者が来署(所・隊)した場合において、警察官が警察署等において事情聴取の結果、次の事項に該当することが判明したときは、速やかに現場見分を行うものとする。

 

① 人身事故に発展するおそれがあるとき

② 運転者の交通違反が明白で、立証が必要となったとき

③ その他現場見分を実施する必要があると認めたとき

 

⇒典型的には、人身事故に発展する可能性がある事故であることが判明した場合には、実況見分が実施されることになります。

 

2.事故の記録

 

事故の記録に際しては、様式が定められた「物件事故報告書」を作成することとされています。

 

この場合、事故状況欄に衝突地点及び事故概要をメモ程度に簡記することとされています。

 

ただ、人身事故への切り替え、交通事故をめぐる保険金詐欺事件等に対応するため、必要により、現場見分の省略、非省略を問わず、関係者の言動等を事故状況欄に記録しておくこととされています。

 

また、現場見分を省略した物件事故については、当事者の不安解消等のため、メモを交付することとされています。

 

■交付されるメモの雛形

・お知らせ欄

「事故によって怪我があり、医師の治療を受けられた時は、速やかに○○警察署交通課(担当○○)又は○○交番・駐在所(担当○○)へ届け出てください」という内容が記載されています。

 

・本人メモ欄

事故発生日時、場所、相手方情報を記載する欄が設けられています。

 

第3 まとめ

 

物損事故で、次の要件を充たす場合には、実況見分は行われず、よって実況見分調書も作成されません。

① 警察官による交通流の回復等緊急の措置を講ずる必要がない場合

② 当事者が現場見分を希望せず、車両と共に来署(所・隊)することが可能な場合

 

処理要領上は、何が何でも実況見分を行わないということではないため、状況として事故原因に争いが発生しそうな場合には、物損事故であって臨場する警察官に実況見分の実施を強く申し入れて、実施をしていただくことも一案でしょう。

 

また、現場見分を省略した物件事故については、当事者の不安解消等のため、メモを交付することとされていますので、事後紛争が発生したとしても適切な対応ができるよう、メモの交付を受け、必要事項を記入しておく必要があるでしょう。

 

以上

(弁護士 武田雄司)

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