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私立学校の学費が考慮されるか

野田俊之

お子さんが私立学校に通学されている場合,婚姻費用・養育費の算定にあたって,私立学校の学費が考慮されるでしょうか。

 

この点について,大阪高裁平成26年8月27日決定判タ1417号120頁は,以下の通り,判示しています。

 

まず,同決定は,

「抗告人(夫のことを指します。)は同居中に私立中学受験を前提にして長男の家庭学習を指導していたと認められるほか,別居後も,長男がA(私立学校)中学部に在籍していることを前提に,婚姻費用を支払ってきたことが認められる。また,Aは中高一貫教育の学校であるから,中学部に在籍している生徒は,特段の問題がなければ,そのまま高等部に進学する例が多いと考えられる。したがって,中学及び高校を通じてAの学費等を考慮するのが相当である(なお,当事者双方の別居をもって,直ちにこの特段の問題に当たるということはできない。)。」と判示して,一定の場合に,婚姻費用・養育費の算定にあたって,私立学校の学費を考慮することを肯定しました。

同決定においては,夫が私立中学受験を前提に家庭学習を指導していたこと,夫が私立学校に在籍していることを前提に婚姻費用を支払ってきたこと,Aが中高一貫校であることなどを考慮して,私立学校の学費を考慮することを肯定しています。

より一般化していうと,義務者が私立学校に進学することを承諾していたか,夫婦の学歴,職業,資産,収入,生活状況,居住地域の進学状況といった事情を考慮した上で,私立学校の学費を考慮することが相当である場合には,私立学校の学費が加算されることとなると思われます。

 

その上で,具体的にどのように私立学校の学費を考慮するのかという点について,上記の大阪高裁決定は,

「標準的算定方式においては,15歳以上の子の生活費指数を算出するに当たり,学校教育費として,統計資料に基づき,公立高校生の子がいる世帯の年間平均収入864万4154円に対する公立高校の学校教育費相当額33万3844円を要することを前提としている。そして,抗告人と相手方(妻のことを指します。)の収入合計額は,上記年間平均収入の二倍弱に上るから,標準的算定方式によって試算された婚姻費用分担額が抗告人から相手方へ支払われるものとすれば,結果として,上記学校教育費相当額よりも多い額が既に考慮されていることになる。そこで,既に考慮されている学校教育費を50万円とし,長男のA高等部の学費及び諸費の合計約90万円からこの50万円を差し引くと40万円になるところ,この超過額40万円は,抗告人及び相手方がその生活費の中から捻出すべきものである。そして,標準的算定方式による婚姻費用分担額が支払われる場合には双方が生活費の原資となし得る金額が同額になることに照らして,上記超過額を抗告人と相手方が二分の一ずつ負担するのが相当である。」と判示しています。

つまり,標準算定表においては,子どもの生活費指数を定めるにあたって,公立学校の学校教育費のみが考慮されているに過ぎないことから,私立学校に通学する子どもについては,生活費指数では考慮されない差額の学費が発生することとなります。そこで,子どもが私立学校に通学している場合の婚姻費用・養育費については,公立学校の学費と私立学校の学費の差額分について,義務者と権利者で2分の1ずつ負担すべきであるとの判断を示しました(なお,同決定においては,夫婦の収入が平均収入を上回っていたことから,単純に公立学校の学費と私立学校の学費の差額を按分するのではなく,学校教育費を50万円として,この50万円と実際の私立学校の学費90万円との差額を按分するという算定方法が取られています。この通り,夫婦の収入が平均収入を超える場合には,標準算定表に従って婚姻費用・養育費を計算した場合,通常の学校教育費よりも多くの学校教育費が婚姻費用・養育費において考慮される結果となりますので,算定方法に注意が必要です。)。

 

以上の通り,お子さんが私立学校に通学されている場合,具体的な事情によっては,婚姻費用・養育費を算定するにあたって,私立学校の学費が加算されることがありますので,こうしたケースで婚姻費用・養育費を請求するにあたっては,弁護士に相談されることをお勧めします。

 

弁護士 野田 俊之

 

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